著作権巡る政策決定

 クリエイティブ・コモンズ(CC)の活動は、著作権を巡る政策決定に役立つことが期待されている。

 これまで、著作権に絡む政策や法整備に関して、コンテンツの権利を持つ大企業や業界団体が大きな影響を及ぼす傾向があることが指摘されていた。コンテンツビジネスの維持に必要不可欠な著作権制度だけに、行政や政治への働きかけにも力が入る。しかし一方で、組織力に欠ける一般ユーザーの利益はなかなか政策に反映しにくい。

 この点、権利者とユーザーの双方の利益のバランスを重視する非営利団体のCCの活動は著作権政策に新しい風を送り込む可能性がある。著作権に詳しい北海道大学大学院法学研究科の田村善之教授は、「個人などの消費者の動向を捉えるうえで、CC活動が有効に作用することが期待される」とコメントする。

 西洋で活版印刷が発明されたときは、高価な印刷装置を所有する者だけが複製できた。ごく一部の業者だけが著作権を意識する時代だったのだ。出版やテレビ放送がメディアの中心を占めてきた近代でも、著作権と一般消費者との距離はまだ遠い。ところが、現在はほとんどコストをかけずに、個人がネットへコンテンツを発信できる。動画投稿サイトには、個人が制作した優れた映像作品が溢れる。著作権が一般個人の生活にかつてない大きな影響を与える時代を迎えた。

 コストがかからないだけに、趣味でコンテンツを制作するアマチュアや、あまり権利を主張しようと思わないクリエーターが増えている。コンテンツをビジネスにしている企業では考えられないことだが、ニコニコ動画などユーザー参加型メディア(CGM)は、まさにこうしたユーザーに支えられ、発展してきた。

 田村教授は、「今の著作権制度は、徐々に現実と乖離している部分がある」と指摘する。角川グループホールディングスの角川歴彦会長CEOも、「権利者とユーザーの調和のとれた21世紀型の枠組みが必要」と、CGMなどWeb2.0時代に合った新しい著作権制度の仕組みが求められると捉えている。

 新しい著作権のルールづくりが求められるなか、CC活動はこれまで埋もれがちだった一般ユーザーの声を政策決定の過程に届けるポジションにある。また、これからの著作権制度は、国内だけにとどまらない。日本のコンテンツをより多く世界に発信していくうえでも重要な役割を果たす。コンテンツ産業やそれを支えるIT産業にも多大な影響を与えるだけに、ユーザーの声を広く反映したものとなることが期待される。(安藤章司●取材/文)