“三位一体”が成功のカギ

 ペンチ・ニッパ製造の老舗企業であるフジ矢がIT化を含めた経営革新に乗り出したのは2001年10月。

 担当ITコーディネータの川端一輝・ITC-Labo.理事長は、まず経営戦略の策定から始めた。「社長の熱意を経営戦略につなげる」がコンセプト。野崎恭伸・フジ矢社長の積極的な姿勢に共感したためだ。だが、経営者の考えを一方的に全社に押し付ける「トップダウン方式」は社員の士気をそぐ恐れもある。そこで、「ボトムアップ」にもっていく狙いで、戦略策定会議には経営幹部を含めて多くの社員を参加させる方法をとった。これにより打ち立てた中期経営計画は、「5年後に売上高2倍、経常利益率10%、在庫30%削減」という内容。野崎社長は、「当時の業績を考えると高すぎる目標だったかもしれない」と言うが、「社員が会社の状況を把握し、業績向上の意欲を持ってくれたので、必ず実現できると確信した」と目を細める。ボトムアップ施策の一環として、社内の情報をすべてオープンにした。全社員に経営参画の意識を持ってもらうため、年2回のペースで経営方針発表会も開催するようになった。

 全社的に進む方向性が固まった段階でIT化に着手。業務プロセスの改善に向け、販売予測を含めた生産管理システム導入を検討し、候補ベンダーのなかからソランが選ばれた。

 担当者は清野尚氏。現在、関西事業本部で新規事業関連に携わり、ビジネスモバイル推進部統括マネージャを務める。ITコーディネータの資格も取得している。「ユーザー企業が明確にIT化をイメージしているケースは少ない。フジ矢の場合は、どのようなシステムを提供すればいいのかが把握できた」(清野統括マネージャ)というのが、案件を担当した際の第一印象だった。ただ、依頼を受けたのが02年9月、本格稼働の時期として半年後の03年3月を求められた。ユーザー企業がイメージしている通りのシステムを納期までに構築しなければならないタイトなスケジュールに苦労させられた面もあった。とはいえ、フジ矢としてもシステム構築をソランに丸投げしたわけではない。野崎社長自らが夜遅くまでデータ入力作業をしたこともしばしば。清野統括マネージャは、「フジ矢さんと川端さん、そして当社が一体となってシステム構築を進めた実績は、その後の案件で最適なソリューション提案を行うのに大きな成果をもたらした」と強調する。

 フジ矢のIT化が成功したのは、同社自身が変革を遂げようとしていたことが要因の一つとしてあげられる。それだけではなく、ユーザー企業とITコーディネータ、ベンダーが一つの目標に対して足並みを揃えたことが大きい。フジ矢は次のステップとして、「マーケティング分野のIT化」を計画している。