社員の経営参画意識を高める

 名古屋に本社を置く物流サービスの中京陸運(鷹見正彦社長)は、2008年4月に運行管理システムを大幅に刷新した。GPS(全地球測位システム)を駆使し、運行する約400台の輸送車両の位置を本社で一括管理し、法令で定められた運転日報などの業務記録を携帯電話から簡単に入力できるよう機能を強化。輸送車両の運行状況がリアルタイムで把握できるようになったことにより顧客サービスが向上し、従来の手書きの運転日報を事務所で入力し直す手間も省くことができた。

 中京陸運がIT投資に踏み切るきっかけの一つとなったのが“中部IT経営応援隊”のセミナーだった。経済産業省が中心となって立ち上げた中小企業をITの側面から支援する「IT経営応援隊」活動の中部版であり、地元有志ITコーディネータが多数協力する。この活動の一環として開催したIT活用型経営のセミナーで、後に担当ITコーディネータ(ITC)となる水口和美ITCと中京陸運の情報システム担当者が出会ったのだった。

 売り上げ拡大を目指す中京陸運にとって、経営品質を高める組織づくりが大きな課題として浮上していた。生産性を高め、競争力を強化するには戦略的なIT投資が欠かせない。水口ITCは、中部IT経営応援隊のセミナーを契機として06年から中京陸運のIT活用型経営の支援を始めた。経営戦略からIT活用まで体系立ててまとめられた「ITCプロセスガイドライン」に基づくコンサルティングを実施。幹部社員への集中的な研修を行うことで、経営への参加意識を高めることに力を入れた。

 中京陸運は1953年の設立以来、堅調に事業を拡大。直近の年商は約89億円まで成長してきた。だが、将来的に年商100億円を超えてさらに伸びていくためには、現状の経営基盤では弱い側面がある。オーナー企業特有の、トップの意向が強く出過ぎる傾向が見られ、「準大手・大手へと成長するには幹部社員の経営意識の向上とITの戦略的な活用が必要だ」と、水口ITCは分析する。トップダウンで経営方針を決めるだけでなく、ボトムアップ方式で組織を運営する仕組みを取り入れるよう助言。研修を通じて、経営に積極的に参画する若手幹部の育成に努めた。

 IT戦略でも積極的にアドバイスを行った。水口ITCがコンサルティングを担当した06年秋に、中京陸運は運行管理システムを大幅に拡充する方針を決定。組織改革や業務改善は、ITの戦略的な活用抜きに語れない。コンサルティングを通じて理解を促進したことが、物流サービス会社にとって最も重要度の高い「運行管理システムを見直す動機づけの一つとなった」と、中京陸運の高橋泰史・情報システム課長は話す。