視点

セミナーから見える法とソフトの融合

2008/12/01 16:41

週刊BCN 2008年12月01日vol.1262掲載

 この春以降から、業務ソフトの販売会社や開発会社からセミナー依頼を多く受けており、そのセミナーもおかげさまでほとんどの会場で満員となっている。その内容は、労働基準法関係が多いのだが、なかでも労務リスク関係が好評をいただいているテーマである。

 精神疾患社員の増加、セクハラ・パワハラ、個人情報漏えい、内部告発、サービス残業(名ばかり管理職)等の労務リスクにどのように対応するのかという内容になっている。従来、私がセミナー等の依頼を受ける業種は、銀行を中心とした金融機関が多く、主に年金等のセミナーが多かったことを考えると、最近の傾向に違和感を覚えていた。


 もちろん、呼んでくださる企業にとっては、セミナーだけを無料提供するのではなく、その後の商品販売につなげるのが目的であり、例えば、勤怠管理ソフト等は分かりやすい例である。しかし、残業対策で効果的な労働基準法の変形労働時間制に完全対応した勤怠ソフトは未だお目にかかったことがない。


 私は、セミナー参加者にいくつか質問を投げかけるようにしている。その一つは「就業規則で、自己都合退職する社員は何日前までに申出をすればよいという規定になっていますか?」という問いである。1か月前が約6割、2週間前が約4割といった割合になる。次に、「自己都合退職の申出があった日以後、社内文書へのアクセス権限の制限をはじめとする情報漏えい対策を採っていますか」という問いだ。対策を採っている会社は2-3%程度しかない。


 この実態には驚いた。顧客名簿や個人情報の漏えいが毎日のように問題になっているのに、退職する社員が全く野放しとは…。これでは事故が頻繁に起こるはずである。この問題について、私にとっては意外にも、セミナーに呼んでいただいた企業が開発中の文書管理ソフト等ですぐに対応できることも判明した。


 そこで最近では、呼んでいただく企業のソフトを見せてもらい、労務管理と実際にどのような形でリンクしていくのか、あるいは、労務リスク問題を解決する一つの手段としてのソフトウェアが開発できないのかという視点を置きながら事前に打ち合わせをさせていただくようにしている。


 労務コンプライアンスとその対策に際して、実際には業務ソフトで解決可能な分野もある。今後ますます、法律とソフトウェアの融合が求められてくるのではないかという予感がしている。

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