“100円印鑑”の緻密な販売管理

 低価格を売りとしている「100円ショップ」。生活雑貨や食料品、文具など生活必需品を豊富に揃え、週末になると主婦や子供連れの家族、若いカップルで賑わうショップも少なくない。その100円ショップで、人気商品の一つとなっているのがネーム印鑑だ。通常の印鑑に比べて価格が10分の1以下ならば、「とりあえず買っておこう」と考える消費者が多いはず。この“100円印鑑”を開発したのが、文具製造販売のクリークである。

 クリークは、1987年に大阪市で創業。当時は個人経営で日用雑貨品の卸売業を営んでいた。100円ショップが誕生したように競争激化の業界であることからも、小規模の卸売業者が生き残っていくには、「今までにない新しい商品を創造していかなければならない」(谷川英二社長)と判断した。そこで、印材や成型部品などのメーカーや外注工場などを集めて100円印鑑を開発。100円ショップ経由で00年4月に発売し、間もなく大ヒット商品となった。

 100円印鑑の販売から6か月後に法人化。その後は、印鑑とボールペンが一体となった商品をはじめ、捺印部分を回転させることでキャップレスにした認印、特殊な印面で個人情報の消し込みが可能なスタンプなどを開発。今では、100円ショップ以外でも取扱い店舗が増えており、年商3億円規模にまで成長している。

 同社が事業を拡大できたのは、斬新な企画力で消費者の購買意欲を促す商品を次々と市場に投入していったことが最大の要因。それを裏で支える積極的なIT化が効果をあげたのだ。生産や在庫、販売データなどの管理面でITをうまく使いこなしてきたことが功を奏している。というのも、生活雑貨のなかで印鑑は生産管理や販売管理が難しいといわれているからだ。日本に多い名字の印鑑は売れる量が多いが、珍しい名字は販売量がそれほど見込めない。しかし、地域によっては特定の名字の印鑑がよく売れるケースがある。だから、日本人の名字をある程度網羅しておかなければならない。しかも、低価格商品だけに、利益を確保するには名字ごとに販売データをきちんと分析し、適正な在庫量を把握する必要がある。

 見込生産だから、過剰生産や過剰在庫、あるいは品切れによる販売機会損失がストレートに利益を食ってしまう。販売・在庫状況を緻密に分析しなければならない事情から、「Webベースの基幹業務システムの導入を決断した」(谷川社長)という。 新システム構築にあたり、大阪を中心に多くの地域で中小企業のIT化を支援している大塚有希子・ITコーディネータ(ITC)に依頼。クリークと大塚ITCによる“二人三脚”のプロジェクトが始動することとなった。