IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>74.「IT経営力大賞」シリーズ クリーク(下)

2008/12/22 16:40

週刊BCN 2008年12月22日vol.1265掲載

小規模卸“発”SCMを構築

 
 文具製造卸のクリークがウェブベースの基幹業務システム導入に踏み切った背景には、「小規模卸売業“発”のSCM(サプライチェーンマネジメント)を構築したい」という谷川英二社長の考えがある。

 100円ショップ向け印鑑が大反響を呼び、人気商品を作り出した業者として部材メーカーや外注工場などに認知された。事業拡大のためには彼らとのパートナーシップを深めていく必要に迫られてきた。だが、その頃の社内のITといえばまだ「ワード」や「エクセル」「アクセス」などがせいぜい。店舗からの受注情報はファクシミリで送られてくる。部材メーカーや外注工場などへの発注も紙ベースで、クリークが電子化して再び印刷するといった具合だ。「情報交換がファクシミリ主体のために一元管理が行えない」。紙ベースでの情報伝達は正確な状況判断が遅れると認識していた。業務の可視化が不十分で社員間や企業間の連携が図れない課題もあった。そこで、「SCMによるトータルコストの低減と業務の可視化による生産性の向上で課題を払拭する」ことを決断した。

 IT化に向け、ITコーディネータに依頼したのは、中小企業基盤整備機構が実施している「IT推進アドバイス事業」の制度を銀行から聞いたことがきっかけ。「社長の自分が判断できない正当な評価や検証をITCに判断してもらいたい」との考えもあった。担当した大塚有希子ITCは財務関連を含めた経営革新に定評がある。依頼後、約8か月間かけて大塚ITCがコンサルティングを実施。「谷川社長が考えるIT化の方向性がはっきりしていた。順序立ててシステム化を進められた」と振り返る。基幹業務システムのウェブ化に着手したのは2003年3月。それから2年の歳月を経て05年3月に本格稼働に至った。

 構築したウェブ基幹業務システムの最も特徴的なのは、「SCMを構築したい」といった谷川社長の考えに基づいて取引先を巻き込んでいる点だ。同社の従業員は7人だが、部材メーカーや外注工場などを含めると社員が320人、システムオペレータが33人の規模となる。このメンバーがすべてウェブベースの基幹業務システムのデータを活用して業務をこなすことができる。「(発注先を含めれば)300人以上の人員で、しかもIT化による攻めの戦略を立てれば、大手商社と対等の取引が可能となる」と谷川社長はアピールする。

 企業がITシステムを導入するのは、業務の効率化や可視化などが主な目的といえよう。こうした課題を解決するためにクリークはIT化を図ったわけだが、同時に小規模業者の“仮想連合体”を作る仕組みで激しい競争に打ち勝つビジネスモデルを構築したことにもなったのだ。
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