世界的な金融不況の影響で、年末商戦は暗い話題が多かった。しかし、全体のムードに押し流されて悲観論に終始していたのでは、市場の本質を見落としかねない。消費の減速、価格下落というマイナス面の一方で、需要喚起に結びつく糸口も見えていないわけではない。不況の底を脱した後の展開を拓くヒントも隠されているはずだ。

 そうした意味で、デフレ市況の象徴的な商戦となったのがPCの店頭市場である。大手量販店の実売データを集計した「BCNランキング」でみると、昨年12月の販売台数は前年比123.4%。景気指標が軒並み下ぶれするなかでは突出した伸びとなった。

 牽引役は超低価格の「5万円PC」と呼ばれるミニノート。従来の12万円前後の標準的なA4ノートの半額以下で、ネット接続も含めて個人用途ならばそこそこの機能の最新PCが手に入る。売れるのは当たり前だが、一方で販売金額は91.6%と前年を割り込んだ。


 とはいえ売れているのは低価格のミニノートばかりかといえば、そうではない。ノートPC全体の7割を占めるA4ノートの台数も、昨年8月以降5か月連続で前年を上回った。とくに10月は107.5%、11月は112%と高い伸びになった。金額ベースもミニノートブーム以前に比べても堅調だ。この勢いがどこまで持続するかは微妙だが、超低価格モデルの登場が売り場の客足を増やしたことは確か。予算に応じて既存モデルとの選択消費を促し、全体的な相乗効果につながったというプラス面は見逃すべきではないだろう。世帯普及率が7割を超え、新規も買い換え需要も低調という成熟化が進んだ市場の沈滞ムードに、超低価格ミニノートが強烈なカンフル剤となったことは間違いない。


 問題はこの先である。一般家庭には購入後5年以上を経過した据え置き型のPCがまだ2000万台以上は眠っているはずだ。不況が底を脱した時期に、一斉に買い換え需要が動き出す。ミニノートは海外ブランドが席巻したが、ホームPCは国内メーカーの主戦場。クラウドという次世代のトレンドを踏まえれば、機能や価格帯ともにこれまでのPCの概念を一変させる商品開発も可能だ。


 市場が求めているのは単なる低価格化だけではない。ここにどのような布石を打っていくのか。国内メーカーにとっては最大の正念場であり、起死回生のラストチャンスでもある。