この1年、データ放送に関する共同研究作業にたずさわり、過日、その成果を発表する機会があった。これを契機に、改めてデータ放送をメディア史の文脈のもとで考えてみたことを以下に記してみたい。

 現在、Dボタンを押して表示される地デジ・データ放送のフォーマットは、メインの放送をL字型に取り囲むような形をとっている。このたたずまいをみていて筆者が思い出したのは、1990年代半ば、プッシュ・テクノロジーという用語とともに提供されていたポイントキャストやIE4に実装されていた「アクティブ・デスクトップ」のフォーマットであった。しかし、「せっかくインターネットによって双方向コミュニケーションが可能になったのに、いまさら押しかけ型のサービスでもあるまい」ということだったのか、この種のサービスの導入機運はいつの間にかしぼんでしまった。


 しかし今日、Windows Vistaにサイドバーが実装され、多彩に提供されているGoogle GadgetsやYahoo! Widgets等がPC上に展開され、さらに同種の「アプリ」が多機能携帯やスマートフォン上で利用されている現状は、一度後退したプッシュ・テクノロジーが、いわばガジェット/ウィジェット文化(ビジネス)として息を吹き返し、(今度は)しっかりと根を張りつつあることを示すものといえる。


 こうしたなかで、ユーザー側では、どのような手段で、“氾濫”するガジェット/ウィジェット・サービスとつき合っていけばよいか、その選別を迫られ始めている。一方、プロバイダ側では、自らのサービスをユーザーに最大限使ってもらう環境をどのように構築するかが問われているといえよう。


 このような現状を象徴するものとして、昨年10月、フジテレビが「さわって貼れるおもしろメディア」という性格づけのもと「ガジェットちゃんねる」というサービスを、さらに日本テレビがこの3月「日テレアプリ」というサービスを開始したことがあげられよう。いうまでもなく、これら2局は従来よりデータ放送を提供しているわけだが、その一方でインターネットに軸足を置き、それぞれ「ガジェット」「アプリ」というコトバを冠したサービスを提供する。その延長線上において、どのような全体的見取り図が描かれているのか、そのなかに「ボタンひとつで誰もが利用できるガジェット」としてのデータ放送がどのような形で位置づけられているのかが知りたいところである。