IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>91.「IT経営力大賞」シリーズ・第二弾 松栄テクノサービス(上)

2009/05/04 16:40

週刊BCN 2009年05月04日vol.1283掲載

保守サービス用のDB構築へ

 大盛況だった愛知万博(愛・地球博)の会場跡にほど近い愛知県長久手町。交通の要衝である東名高速道路名古屋インターチェンジから徒歩10分ほどのところに、松栄テクノサービス(吉澤彬社長)の本社がある。同社は工作機械の一種である溶接用ロボットの保守メンテナンスサービスを手がける。

 保守サービスの対象は、パナソニックグループのパナソニック溶接システム社製のロボットがメイン。中部地区の同社製ロボットの保守サービス会社では最大手である。

 松栄テクノサービスには、大きな経営課題があった。本業である保守サービスに使うデータベース(DB)を構築できておらず、紙のファイル情報で管理していたことである。

 社員全員が使うパソコンや電子メール、グループウェア、財務会計用のパッケージソフトなど、情報系システムや総務系の会計システムなどは、段階的に整備してきたものの、肝心の本業に関わる業務システムに弱点を抱えていたのだ。

 かねてから経営指導を受けていた中小企業基盤整備機構中部支部(名古屋市)に相談を持ちかけたところ、同支部で中小企業・ベンチャー支援を手がけるITコーディネータ(ITC)の三宅順之チーフアドバイザーの紹介を受けた。2007年4月から松栄テクノサービスのシステム化を引き受けた三宅ITCは、同社の業務内容やITの活用状況を分析。全社的観点でDB整備のあり方を検討することになる。

 中部地区は全国有数の自動車産業の集積地であり、数多くの溶接用のロボットが製造現場に設置されている。そうした工場に設置されたロボットが故障すると生産ラインが止まることもある得る。復旧は一刻を争うもので、常に“時間に追われる”のがロボット整備の特性だ。

 故障発生から「2時間以内に再稼働することを目標としている」(松栄テクノサービスの吉澤社長)と、短時間のうちに復旧し、ラインの停止時間を極力短くする必要があると話す。

 こうした事情があるので、松栄テクノサービスが保守対象としているロボット約6000台すべてに個別の番号を割り振り、この番号をもとに過去の修理履歴や部品構成、周辺機器の情報、点検履歴などを瞬時に引き出すDBシステムを構築することは、サービス品質を向上させるうえで、有効なことは明らかだ。

 こうしたDBを活用したシステムがなぜ今までできなかったのか──、その最大の理由は、作業報告書の作成そのものにあることが判明した。さらに、ITベンダーに向けたRFP(提案依頼書)の作成は、本来なら3か月ほどで完成するはずだったが、予想もしなかった大きな問題に突き当たり、開発が難航することになる。
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