地元商店向けニュービジネスを企画

 福島県喜多方市で印刷業を営む耶麻印刷の芳賀裕示代表取締役は、ITを積極的に活用する経営者だ。技術には明るくないものの、旬のテクノロジーを学び、事業に取り入れてきた。1990年代前半にはフリーペーパーのWeb版を発行し、中盤では印刷物の注文をインターネットで受け付けるシステムを稼働させた。今ではどちらも一般的なビジネスになっているが、当時は斬新で「ビジネス拡大に貢献した」と芳賀氏は振り返る。

 ITコーディネータ(ITC)の山口康雄氏に協力を依頼したのは、印刷物のオンライン注文が減り始めたことがきっかけだった。山口氏はSEO(検索エンジン最適化)対策と、Webサイトのデザイン変更に力を尽くした。ポスターやパンフレット、名刺など印刷物の種類別に商品メニューを体系化して表示したことで、分かりやすく閲覧できるようになったほか、「and検索」で検索結果の上位に表示される効果も出た。

 山口氏はサポートするにあたり、耶麻印刷の強みと弱み、IT化の現状、IT予算を調査・分析し、そのうえで最も効果が出やすい改善ポイントとしてWebサイトの修正を選んだ。地味な改革ながら、顧客である耶麻印刷の評価は高い。芳賀氏は、「山口さんにサポートを受ける前と後とで、PV(ページビュー)がどれほど上がったかは調べていない。ただ、Web経由の注文が再び増加したのは事実」と、その効果に満足している。

 主軸ビジネスの印刷業が山口氏の協力で再び軌道に乗り始めた現在、IT活用のアイデアマンは、ITで従来とは全く違うビジネスを山口氏と生み出そうとしている。携帯電話を活用した地元商店街向け事業だ。「GMS(総合スーパー)の勢いに押されて尻すぼみになっている地元商店を元気にしたい」という気持ちが一番の理由だが、ビジネスチャンスがあるとも感じていた。

 ASP型の携帯電話向けメールマガジン配信サービスの再販権利を取得し、地元商店に販売。セールやキャンペーン情報を頻繁に発信できる仕組みを提供するのだ。それだけでなく、得た情報と耶麻印刷が集めた付加情報を一元管理して、消費者が喜多方市内と周辺地域の商店街情報を容易に閲覧できるように、ポータルサイトを構築した。経済産業省が手がける「地域力連携拠点事業」の採択拠点である地元金融機関の支援で仕組みを作り上げ、すでにサービス提供中だ。この事業でも山口氏はサポート役を務めている。

 芳賀氏はITC活用のメリットをこう語っている。「今まで全部1人でやってきたから、独りよがりで進めてきた部分もあった。山口さんの意見を取り入れることで新たなアイデアが生まれた。そして、ビジネス全体を支援してくれることが大きい」。IT化だけでなく、経営や営業先開拓もサポートしている点でITCの効果を実感している。