前回のこのコラムでは、ネット空間に広まりつつある“息苦しさ”について考えたのだが、その末尾で言及したのがフランスの通称「スリー・ストライク」法をめぐる動きであった。具体的には、新設される違法ダウンロード監督機関に「2回にわたる警告後も違法行為を止めない者に対し、一定期間、インターネット遮断措置をとりうる」権限を付与する法律が成立したものの、言論の自由の観点からみて違憲であるとの司法判断により施行が差し止められたというものだ。

 この法律は、サルコジ大統領と大統領夫人で自らミュージシャンでもあるカーラ・ブルーニの強い意向もあって、当初案議会否決→再上程後可決→憲法院(前回は憲法評議会と記述)の違憲判断による失効という結果となった。にもかかわらず、この初夏、修正法案は再度議会に上程され、九月に議会を通過している。紆余曲折を経て成立した修正法では、憲法院の合憲判断を引き出すため、当初案において行政機関に付与されていた「遮断」権限を、司法に委ねる修正が加えられた。このため、議会通過後、社会党による差し止め請求がなされたものの、10月下旬、前回とは異なり憲法院も合憲との判断を下し、施行が確実となった。これにより、早ければ来年半ばにも、ネット遮断の最初の“犠牲者”が生まれる公算が大きくなった。

 こうした動きに呼応するかのように、ヨーロッパでは、欧州議会において規制容認の方向への変化が認められるほか、イギリスでもアカウント剥奪処分を含む規制策の導入が検討される機運にある。

 しかし、その一方で、この種の規制に対しては、かさむコストに比しての実効性を疑問視する向きもある。法案審議の過程で明らかにされたフランス政府の試算によれば、年当たり5万人の遮断処理を行うためには、16人の裁判官を含めて100人以上の常勤スタッフが必要とされ、加えて、監視システムの構築費、プロバイダ側の出費も必要となってくる。その一方で、BitTorrent といったP2Pファイル転送ソフト利用者の間では、IPアドレスを隠し、ネット上で匿名を騙る方法の開発が進められているという。

 21世紀早々、Napsterの登場を契機として展開された“いたちごっこ”が再燃する気配が感じられるなか、例えばiTunes Music Storeに続く、第2の「三方一両損」的ソリューションないし「太陽政策」の案出にこそ、エネルギーが注がれるべきだと考えるのだが。