IBMパートナーが興すビジネスイノベーション

<IBMパートナーが興すビジネスイノベーション>第1回 エス・アンド・アイ(S&I)

2011/02/17 20:29

週刊BCN 2011年02月14日vol.1370掲載

 日本IBMは、クラウド時代の新たなパートナーモデル「IBMサービス・オリエンテッド・パートナリング(SOP)」というサービスの流通・再販モデルを推進している。このなかで、IBM製品をベースとしてパートナー同士でクラウド・サービスを生み出す「協業サービスパートナー」というカテゴリーを設けている。この1社であるエス・アンド・アイ(S&I)は事業全体をサービスにシフトするため、IBMなどと連携して、新モデルを構築した。

ハード脱却、サービスへ移行

 S&Iは、2011年3月から無床のクリニック/診療所向けの電子カルテサービス「Karte Cloud(カルテクラウド)」を提供する。経済産業省の支援を受け開発されたオープンソース電子カルテ「OpenDolphin」をベースにした商用版電子カルテ『DolphinPro』(開発:ライフサイエンスコンピューティング社)を採用。日本医師会開発・日医標準レセプトソフトORCA(オルカ)と連携させることで、月額のサービス利用料を低額に抑えることを可能にした。「2010年末頃から問い合わせが殺到している」(藤本司郎社長)と、同社がサービス事業を拡大するうえで、柱となり得るサービスへの成長を期待する。

 クリニックや診療所で電子カルテを導入する場合、IT専門要員の確保が難しく、サーバーの運用が課題になることが多かった。だが、インターネットを利用して院外データセンターで処理とデータ保管を行うSaaSモデルの採用で、バックアップを含めたシステム運用の手間を省略することが可能になる。

 「Karte Cloud」は、マルチプラットフォームに対応しているため、iPadやiPhoneを使ってデータセンターから患者の診察データを参照し、在宅診療や診察の際に、その場で治療経過や診療状況を説明することができる。S&Iでは、患者のケアを重点においたインフォームドコンセントの促進につながると考えている。同社では診療データという重要な情報を扱う「Karte Cloud」のサービス基盤にIBM製サーバー『IBM System x』を採用し、システム基盤としての堅牢性を確保。サーバーの信頼性は、「Karte Cloud」を利用するクリニック/診療所が増加した際にも、安定して提供できる。

 藤本社長は「SOPや『協業パートナー』のプレーヤーと連携したエコシステムを築くことで、当社ビジネスが幅広い層へ波及する可能性がある。このエコシステムのなかで、サービス提供の比率を高めていく」と話す。ハードウェア販売は、現在のところ同社の売上高の大半を占める。クラウド時代に備え、早期にサービス事業を拡大するうえで、日本IBMのSOPは重要な役割を果たしている。(谷畑良胤)

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