3月11日の東日本大震災によって壊滅的な被害を受けた地方自治体で、住民の安否確認に住基ネットが利用された。この事実はメディアがほとんど報道しなかったために、知っている人は極めて少ない。岩手県大槌町や宮城県南三陸町などいくつかの自治体では、庁舎が大津波に襲われ、住民基本台帳などの住民データが失われてしまった。これでは住民票の写しの交付や転出証明書の発行などはもちろん、安否確認すら満足にできない。そこで総務省自治行政局は、震災の2日後の3月13日に、住民の安否確認などに住基ネットの情報を活用することが適切であるという「東北地方太平洋沖地震等に関する住民基本台帳事務の取扱いについて」という通達を出した。

 この通達を受けて岩手県と宮城県は、被災した市町村から依頼に応じて、住基ネットの県サーバーに蓄積された情報を提供できるように住民基本台帳施行条例等の一部改正を行い、宮城県の石巻市、山元町、女川町、南三陸町、岩手県大槌町の5市町村に住基ネットに蓄積されている各市町村の住民情報を紙媒体やCD-ROMで提供した。このようなかたちで住基ネットが利用されることは想定外であったが、住基ネットが、完全ではないにしろバックアップシステムの役割を果たしたことはもっと報道されてよいのではないだろうか。

 今回の大震災でディザスタリカバリの重要性が再認識されている。情報システムのデータが滅失するような災害等が発生する確率はそれほど大きくはないが、そのような事態には備えておく必要がある。これは政府、自治体だけでなく、民間企業も同じである。

 ディザスタリカバリの方法として、昔から行われている方法は、データバックアップである。しかし、復旧したデータが少し古いものになってしまうことやリストアに要する時間を考えると、日々更新されるデータやサービスの中断時間があまり許されない業務には別の方法が必要である。どの時点のデータに復旧するのか(リカバリポイント)、どのくらいの時間で復旧するのか(リカバリ時間)を考え、業務ごとに最適なディザスタリカバリ計画を策定しておく必要がある。例えば、もし直近までデータをすぐに復旧させる必要があるなら、オリジナルデータのコピーをほぼ同時に遠隔地に作成するレプリケーションと代替センターを遠隔地に設けるサイト間フェイルオーバーの組合わせが有効である。