視点

社会保障制度は「もはや、これまで……」か

2012/07/12 16:41

週刊BCN 2012年07月09日vol.1439掲載

 この原稿が掲載される頃には、消費税増税法案は衆議院で可決されているはずだ。税と社会保障の一体改革といいながら、税だけが先行したかたちとなった。

 社会保障関係については先送りされたが、そのなかで興味深い提言も出てきた。国民会議である。まさに国民全体が考えなければならない議論であり、その中身を知りたいところである。国は、国民に対して、現状と将来の展望に関する正確な情報を開示すべきだ。

 社会保障の現状は、「危機的状況」を通り過ぎて、「崩壊」に向かっている。いくつかのデータをみるだけでも、ギリシャよりも深刻な状況にあることがわかる。平成元年時点では、1年間に年金・医療・介護といった社会保障関係に支出された費用は45兆円弱、平成21年度は100兆円弱。20年で2倍以上の支出増であり、国家予算を超える金額が必要になっている。平成22年度の人口は1億2806万人、平成67年には9193万人。また、現役(15歳以上65歳未満)世代と引退(65歳以上)世代の人口割合は、平成67年時点では1.3対1の割合になると予想されている。今後、1年間に増加する社会保障関係の費用は1兆円。10年で10兆円である。

 消費税率を1%引き上げれば税収が2兆円増えるとの試算をもとに増税に踏み切ったわけであるが、人口減少社会の現状で、消費税1%あたり2兆円の税収増加の試算も怪しいとの見解もある。消費税を5%程度アップしても、10年ももたないのが実際のところである。将来的には20%以上まで引き上げても、年金制度すら維持できるのか。将来の状況を国ははっきりと国民に示すべきである。この理解に基づいて議論をしなければ、政治的な思惑ばかり先行して、ギリシャ以上の悲劇になると考えるのは私だけか。インターネット社会の利便性を生かして、積極的な情報開示と、多くの国民の意見を集約する仕組みはできないものだろうか。

 日本は、敗戦後に、米国主導で、さまざまな仕組みをつくり上げてきた。この危機的な状況のなかで、日本がとるべき社会保障政策はどのようなものが適しているのか、私たち一人ひとりが真剣に考え、早急に結論を出していかなければならない。そうしないと、「もはや、これまで」となってしまう恐れが十分にある。
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