視点

税と社会保障の一体改革

2011/10/06 16:41

週刊BCN 2011年10月03日vol.1401掲載

 税と社会保障の一体改革の議論が本格化し、財源の確保が急務となっている。今年9月に発表された健康保険組合(全1458組合)の2010年度決算は、医療費増加の影響で4154億円の赤字となった。全体の28%にあたる415組合が保険料率を引き上げたが、過去最大だった2009年度に次ぐ赤字額となった。医療や年金といった社会保障給付費は、2008年で約94兆円。対前年度の伸び率は2.9%である。1985年当時が35兆円だったことを考えると、恐ろしい金額だ。

 日本は、2005年度から「人口減少社会」に突入している。2011年現在、約1億2700万人の人口が、2050年には約9500万人になっていく。この人口減少と少子高齢化は社会保障制度の根幹を揺るがす問題となっている。景気減速のなかで最大の経営課題といえるのが、社会保障関連費用の法人負担の問題だ。ご承知のように、厚生年金・健康保険・介護保険・雇用保険の保険料は、会社と従業員が折半負担することになっている。現在、社会保険関係の保険料は約28%である。これが、近い将来34%近くまで引き上げられていく。会社も個人も3%ずつの負担増である。年収500万円の社員を1人雇っていると、会社負担が15万円も増えることになる。法人税が利益に対して課税されるのに対して、社会保険料は賃金を支払っていれば黒字・赤字に関係なく徴収される。税と社会保障の一体改革の議論は、経営課題であるということを認識しなければならない。

 人口減少社会では、従来の常識や考え方が通用しない場面が多く出現してくる。高度経済成長と人口増加の時代には、先輩の教え通りに動いていれば、売り上げに貢献できる社員でいられた。しかし、購買層が25%近くも減少し、さらに購買力の中心が65歳以上の高齢者となる時代には、現在のビジネスモデルは通用しないだろう。筆者も、資格試験の受験指導に15年近く携わっているが、「通学で学ぶ」時代から、「ウェブで学ぶ」時代に確実に変わった。このように「ニーズの変化スピードが加速している時代」には、社内のベテラン社員の教えは、ある意味時代遅れであったり、役に立たなかったりすることが多い。そのことは、多くの企業で、社内の教育や研修体制を見直す動きにもつながっている。「真似をする」時代から脱して、一人ひとりの社員が「考える」ことに取り組まないと、これからの厳しい時代に生き残っていけないと“考える”。
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