1990年にソニーが電子ブックプレーヤー「データディスクマン」を発表してからおよそ四半世紀、ソニーやパナソニックが電子書籍配信サービスを開始して「電子書籍元年」といわれた2003年から10年、ようやく日本の電子書籍市場が立ち上がり始めた。

 電子書籍の利点は昔からいくつも指摘されているが、それがようやく実感できるようになってきた。例えば、重い本を持ち歩かなくてもよい。トータルで2000ページを超える吉川英治の『宮本武蔵』も簡単に持ち運べる。おまけに何冊でも重量は変わらないので、その時の気分によって好きな本を読むことができる。本を置く場所がいらない(本棚から本が溢れて困っているわが家には朗報である)。文字や図表の拡大ができる。つまり老眼になっても大丈夫ということだ。音声や映像つきのコンテンツもあるし、インターネット上のコンテンツにリンクを張ったものもある。いつでもどこでもすぐに本を入手できるし、絶版の心配がない。紙を使わないので地球にやさしい。

 状況に応じたデバイスで読書ができるのもうれしい。多くの電子書籍ストアでは、購入した書籍がクラウド上にあり、必要に応じて好きなデバイスにダウンロードして読むことができる。

 実際、通勤中はスマートフォンで、家のリビングルームではタブレットで、寝室では部屋の明かりを消してバックライト付きのブックリーダーで本を読んでいる。インターネットに接続されていれば、どの本をどこまで読んだかという情報もデバイス間で共有できるので、スマートフォンで読んでいた続きをブックリーダーですんなり読むことができる。

 そして、誰でも簡単に出版できるようになった。このことは出版業界に大きな影響を及ぼすに違いない。紙の書籍でも自費出版という手段があったが、電子書籍の場合には格段に安く電子自費出版ができる。おまけに、大手の電子書籍ストアが個人作成の電子書籍を取り扱ってくれるので、個人でも世界中に自費電子出版の本を売ることができる。

 もちろん、課題もある。最大の課題は、書籍の点数がまだ少ないことと価格が高いことである。米国では、数百万種類の書籍が電子化されているが、通常の和書は10万冊程度しかない。また、印刷製本費が不要で、流通コストがほとんどゼロに近いことを考えると、販売価格は半分以下にできるはずだ。この二つの課題はできるだけ早く改善してほしい。