飲食店を専門領域としているITコーディネータ(ITC)の私は、ウェブマーケティングやPOSデータを活用したメニューブックの作成など、ITをトータルで活用すれば、飲食店が売り上げを最大限に高めることができると考えている。その具体例として、秋葉原のステーキ店を紹介しよう。
そのステーキ店は、経営者が自らの経験と勘を頼りに作成したメニューブックを使っていた。そのメニューブックをリニューアルするために、私はステーキ店のPOSデータを分析した。すると、ボリュームたっぷりな大判のステーキに注文が集まっていることが判明した。次に、同じ秋葉原の周辺にある飲食店を調査してみると、近隣のカレー屋などでも、大盛りのメニューが人気になっていることがわかった。データ上でも、現場を歩いてみても、ボリュームのある料理が選ばれていたのだ。そこで、リニューアル版のメニューブックには、“1ポンド(450g)のステーキ”を看板メニューとして前面に押し出した。これが大当たり。今では、来店客の大半が単価の高い1ポンドのステーキを注文するようになった。現在、そのステーキ店では、2ポンドのステーキも売り出して、順調にファンを増やしている。
一方、ウェブマーケティングとして、ステーキ店のホームページでも“1ポンドのステーキ”を前面に打ち出した。この結果、マスコミからの取材依頼がたくさん寄せられるようになった。マスコミが報道すれば、多くの人に知ってもらうことができる。これが新規顧客の増加につながっている。さらに、Facebookやブログを通して、お店がマスコミで紹介されたという情報を広げることで、顧客の増加に拍車をかけている。こうしたITのトータル活用によって、そのステーキ店は、ここ5年間の平均で売り上げが毎年約20%ずつ成長している。
飲食業界は、ITの活用がまだまだ遅れている。しかし、逆にいえば、それだけ支援できる案件の数も多いということだ。このステーキ店のように、これからも多くの飲食店のIT活用を支援していきたい。(談)(真鍋武)