私のような独立系ITコーディネータ（ITC）にとって大事なことは、中小企業が自立してIT経営を実践できるように支援することだと考えている。そのため私は、ITCが一任されて支援するかたちの顧問契約にはこだわらない。

　かつて、販売・製造管理システムを刷新しようとしていた中小の製造業を支援したことがある。その企業には複数のITベンダーから新たなソフトの売り込みが来ていて、経営者からどの製品を導入するのがいいかと相談を受けた。そのとき私は、その企業に最適な製品をアドバイスするのではなく、従業員が自ら話し合う場を設けることを提案した。その後、その企業では、毎週末にキーとなる従業員が集まり、現行システムで欠かせない機能や足りない機能などを話し合った。必要な機能を明確にした後は、従業員主導の下で、導入の工程などの計画立案ができるように支援した。最終的にその企業は、自分たちで最適なソフトを選定し、導入にこぎつけることができた。

　顧問契約を結んで長期的に支援していくやり方は、中小企業からすれば任せきりでいいし、ITCからすれば、定期的な収入源となるので、お互いがWin-Winの関係のように思える（本音をいえば、私もそのほうがありがたい）。しかし、中小企業は継続して顧問料を負担しなければならず、ITCは中小企業の“一人立ち”を阻害してしまうことにもなる。そのことを考慮すれば、顧問契約を結ばないことも一つの道だと思う。中小企業で働く人たちが自らITに関する課題を把握して、解決法を導き出し、適切なITシステムを導入できるように支援することこそが、ITCの真の役目だと考えている。（談）（真鍋武）