私たち二人は、情報系の専門学校に所属して、中小IT企業の新入社員研修や大手IT企業の人材育成などの講師を務めているITコーディネータ(ITC)だ。今回は、専門学校として千葉興業銀行のIT経営を支援した例を紹介しよう。
千葉興業銀行とのつき合いは、システム子会社であるちば興銀コンピュータソフトの新人社員研修を請け負ったことに始まる。あるとき、ちば興銀コンピュータソフトの担当者から「本社(千葉興業銀行)の営業担当のITリテラシーを高めてほしい」と相談を受けた。千葉興業銀行では、営業担当の行員が顧客データを十分に活用して営業活動をしているとはいえない状況だった。
そこで私たちは、営業担当が銀行の基幹系システムにある顧客データを「Microsoft Access」を活用して抜き出し、「Excel」で加工・分析できるようにするための研修プログラムを作成し、研修を行った。これによって、営業担当は、顧客のデータを日々分析して、例えば「定期預金が1000万円を超えたら、すぐに次の提案に移ろう」といった具合に、従来よりも提案に工夫を凝らすようになった。
さらに、研修を実施しただけでなく、この先、千葉興業銀行の営業担当が増員された場合に、私たちが研修を請け負うのではなく、銀行内で解決できるように、専用の教科書とシラバスをつくり、研修の講師を務めることができるインストラクターを育てた。実際の研修に、ちば興銀コンピュータソフトのインストラクター候補者にも参加してもらい、インストラクターとしての身振り手振りや目の配り方などを学んでもらった。
私たちは、ITCは企業のIT経営をオンサイトでずっと支援し続けるのではなく、その企業が一定の成果を上げたら一度手を引くことが大事だと考えている。そのほうが、企業はIT経営を社内で熟成して、定着させることができるはずだ。IT経営の自立を支援したこの事例は、従来から講師を務めてきた私たちの経験を最大限に生かした好事例だと自負している。(談)