教育・人材育成を主軸としているITコーディネータ(ITC)の私は、たまに学校のIT活用を支援することがある。その際にも、私は傾聴の姿勢と中立の立場を忘れないように心がけている。
10年ほど前に、ある私立中高の教務システムの導入を支援したことがある。その学校は、校長先生の指示でシステムを導入しようとしていたが、反対している教師も多かった。教務システムをうまく活用するには、すべての教師に生徒の成績を入力してもらう必要がある。しかし、ただでさえ授業や部活で忙しい教師からすれば、仕事が増えることは極力避けたいという心理が働きがちになる。
そこで、現状調査というかたちで、教師たちの意見をヒアリングした。システム導入に反対する教師には傾聴の姿勢を貫き、不満を吐き出してもらうことに徹した。反対する理由を理解して、「この人ならわかってもらえる」と教師に感じてもらったうえで、システム導入のメリットを説明したところ、ほぼすべての教師の理解を得ることができた。
システムの選定では、特定のベンダーに依らない中立の立場を心がけた。そのうえで、高機能だけれども高価だという理由で大手ベンダーの製品は対象から外し、比較的安価に導入できる中小ベンダーの教務システムに的を絞った。23社の製品を探し出し、トラブルが発生した際にもすぐに駆けつけてもらえるよう、学校から半径50km圏外に所在するベンダーは対象から外した。残った12社の製品の特徴を記した一覧表をつくって、それぞれの教師に点数をつけてもらい、最後に残った3社でコンペを開催して、製品を選定してもらった。
中立の立場で、支援先に合わせたシステムを調達することは、手間がかかるし、決して簡単なことではない。しかし、これがITCの倫理規定だと思う。現在、ある市町村の教育委員会のシステム調達を支援しようとしているが、このお話をいただいたのも、傾聴と中立の姿勢を貫いているからだと思っている。(談)(真鍋武)