コアで官公庁向けソリューションの営業部隊を率いる鷲山博史さんは、データ活用提案のプロだ。20年ほど前に産業機器メーカーでキャリアをスタートしたときから情報解析のプロジェクトに携わり、データ活用の目的を明確にする重要性を胆に銘じてきた。現在は、情報解析を行うことによって治安を守るという官公庁向けソリューションの提案に力を入れている。鷲山さんは、外資系のERPベンダーで身につけたシステマチックな営業手法に日本型営業の人情をからませて、「両面性」を武器に営業現場を動かしている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/津島隆雄)
[語る人]
コア 鷲山博史さん
●profile..........鷲山 博史(わしやま ひろし)
国内産業機器メーカーを経て、ヨーロッパのERP(統合基幹業務システム)ベンダーの日本法人でプロダクトマーケティングやアライアンス構築に携わる。2007年、コアに入社し、官公庁専門部隊の立ち上げに参加。13年から、クラウド環境でのビッグデータ活用ソリューションの企画・営業を率いる。
●所属..........プロダクトソリューションカンパニー
ビジネスイノベーション部
企画担当
シニアマネージャー
●担当する商材.......... 社会の安心・安全を支えるクラウド/データ活用ソリューション
●訪問するお客様.......... 関東地方を中心とする官公庁
●掲げるミッション.......... 情報分析の目的を明確にし、治安の改善につなげる
●やり甲斐.......... 安心・安全のインフラを成すシステムを最前線でつくるおもしろさ
●後輩を率いるコツ.......... 直接案件に関わらない課題を与えて解決策を考えさせることで、課題認識をもってもらう
●リードする後輩.......... 6人
女性営業がお客様の心を開く
「鷲山さん、怖い」と部下にいわれることがある。先日も、一緒に営業訪問をした際、「まるでお客様を睨むような、鋭い目つきでしたよ」と、部下が私に“フィードバック”した。もちろん、お客様や部下を怖がらせるつもりはまったくない。どうも懸命に仕事に取り組む真剣さが顔に現れて、周囲の人たちに少し近寄りがたい印象を与えるようだ。しかし、夜の飲み会では別人になる。場の雰囲気を和らげることを第一に心がけている。
私が備えている「両面性」は、自身のマネジメントの特徴になっていると思う。かつて外資系のERPベンダーで働いた経験があって、そのときのオーストラリア人の上司に、仕事をシステマチックに進めることを叩き込まれた。第一段階では徹底的に市場調査を行う、次は商材開発に専念するといった具合に、自分の活動をきちんとフェーズに分けて、結果を体系的に追求するコツを学んだ。2007年、コアに入って官公庁専門部隊の立ち上げに参加した際は、このスキルを大いに生かすことができたと自負している。
しかし、そうはいっても、やはり日本企業特有の人情も営業活動に欠かせないと思う。そこで、外資系で学んだシステマチックな活動に「ヒト」をからませて、両方の世界をうまく融合しようとしている。
私のチームは、部下の半数が女性だ。あるとき、なかなか進まない案件について、担当営業を男性から女性に変えた。そうしたら、驚くべき効果が現れた。お客様の態度が一変して、商談の後に玄関まで送ってくれたというのだ。
「なるほど、女性のほうが温かく迎えられることがあるんだ」。私はそう考えて、以後、まだそれほどパイプが太くないお客様を女性の部下に担当させるようにしている。
では、先の案件で「オレは男だからダメか」とへこんだ男性の部下をどう元気づけたか。彼に担当させる仕事のハードルを上げて「提案力だけでお客様の懐に入ってこい」と励ました。営業の腕をより一段と磨くよう促して、スキルアップにつなげたわけだ。
実際、彼はその後、提案力を伸ばして、多くのお客様を開拓してくれるようになった。
官公庁にデータ活用を提案する仕事はとても楽しい。しかし、最前線だからこそ先行事例がなく、苦労することが多いのも事実だ。部下を動かして、ソリューションの拡充に力を注ぎ、定評のある日本の治安のよさに、さらに磨きをかけたい。
[紙面のつづき]「点」をつないで「面」に、全体を多角的にみて提案
2013年から、ビッグデータ活用ソリューションの企画・営業活動に携わっている。情報解析技術が登場した当初は、解析の材料となるデータがあまり存在しなかったので、技術・ノウハウをもっていてもビジネスにすることは難しかった。しかし、いまはソーシャルメディアが普及し、文字や映像、動画など、いろいろな情報が溢れる時代。ソリューション提案のポイントは、どんな情報を、何のために解析するかというビッグデータ活用の目的を明確に定めることだと理解している。
松本清張の推理小説『点と線』ではないが、部下たちに意識させているのは、「点」と「面」の両方から考えて提案書をつくることだ。チームの主なお客様である官公庁は、ステークホルダー、つまりITの導入・活用に関わる部署や関係者が非常に多い。担当営業が一つの部署に課題をヒアリングして、それを踏まえて提案書を作成しても、それはあくまでも「点」であって、お客様が求める全体的なソリューションという「面」にはなっていない。だから部下には、できる限り多くの関連部署を訪問して、あらゆる関係者のニーズを吸収し、それぞれの点をつないで面にして、全体を多角的にみてから解決策を提案させている。
現在、官公庁に提案しているビッグデータ活用ソリューションは、治安を維持・改善するためのものが多いので、残念ながら詳細はお話しできない。日本は世界でも治安がいいことで知られる国だが、近年の犯罪の組織化や多国籍化によって、これからは治安を守るために、データの活用が不可欠になるだろう。監視カメラで撮った映像情報をリアルタイムに分析し、怪しい人に気づいたら、すぐに対策を講じるなど、ビッグデータの活用には、安全な街をつくるための可能性があると確信している。ビッグデータはまだまだ未知の世界ではあるが、2020年の東京五輪の開催に向けて提案活動に力を入れ、ITによる治安の維持に最前線で貢献していきたい。

ダンヒルの名刺入れは「恩師からの贈り物」で、社会人になってからずっと使っている。長年愛用して革が柔らかくなっているところが気に入っているとか。