ITコーディネータ(ITC)の私は、「中小企業IT経営力大賞(IT経営力大賞)」の事務局業務に従事している。審査を間近でみている立場から、この表彰制度で高い評価を得る秘訣を明かしたい。
「IT経営力大賞」では、最初に書類審査を行い、一定水準を満たす認定企業を選定する。さらに、そのなかから受賞候補を現地審査して、最終審査を経て受賞企業を決定する。したがって、応募書類が最初の関門となる。
応募書類の記入内容は、主に「経営環境と課題認識」「課題を実現するための方策」「IT経営推進の取り組み」「IT経営実践の成果」の4項目。とくに重要なのが「経営環境と課題認識」だ。経営者が内外の状況をどう認識し、何を経営課題(達成目標)と考えたかということだが、これが意外と難しい。例えば、目的や課題を明確にしていないのに、「ITを導入しました」「売り上げや利益が伸びました」というケースがある。これでは、成り行きの結果がたまたまよかったとも考えられるし、成果の妥当性が判断できない。
また、目的や課題が明確にされていても、「IT経営実践の成果」の具体性が不十分で、本当にIT導入が業績向上に貢献したのかどうかが判断できないケースもある。ITではなく、その企業の商材がヒットしたのが好調の理由ということもあるからだ。IT導入による成果だという根拠を示すためには、最終成果だけでなく、その前提となる顧客数や受注処理件数、従業員の生産性などの量的情報がどのように変化したのかを見える化するといった工夫が求められる。
「IT経営力大賞」は、他企業の参考になるような事例を表彰する制度なので、ITをどのように活用して、IT経営を実現したのかというプロセスが重要になる。(談)(真鍋武)
【ITコーディネータのプロフィール】名前:小野省
所在地:千葉県船橋市
所属:ビジネスデジタル工房
ITC制度が開始した2000年に資格を取得。「中小企業IT経営力大賞」の事務局の仕事に従事している。