キヤノンITソリューションズでウイルス対策ソフト「ESET」のOEMビジネスを率いる長谷川隼也さんは「部下たちに、勢いよく伸びている事業部隊で働くことの『幸せ』を感じてもらう」ことをミッションとしている。SIerに「ESET」をプログラムとして提供し、端末に組み込んでもらうというOEMビジネスの2013年度の成長率は67%。「ESET」のライセンス/パッケージ提供と比べて格段に高い伸びを示している。長谷川さんは、部下とともに新たな市場を発掘して、販売実績を伸ばそうと動いている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/津島隆雄)
[語る人]
キヤノンITソリューションズ 長谷川隼也さん
●profile..........長谷川 隼也(はせがわ としや)
大学卒業後、2004年、キヤノンシステムソリューションズ(現キヤノンITソリューションズ)に入社。ファイアウォール製品である「SonicWALL(ソニックウォール)」の営業に携わる。2012年1月、ウイルス対策ソフト「ESET(イーセット)」の事業部隊に移り、キッティング(組み込み)を手がけるシステムインテグレータ(SIer)に対して「ESET」をプログラムとして提供する営業を統括。
●所属..........プロダクトソリューション事業本部
セキュリティソリューション事業部
エンドポイントセキュリティ営業部
第一課主任
●担当する商材.......... ウイルス対策ソフト「ESET」
●訪問するお客様.......... 「ESET」を端末に組み込み、OEM提供する販売パートナーであるSIer
●掲げるミッション.......... OEMビジネスを伸ばし、「ESET」事業の成長につなげる
●やり甲斐.......... 部下の管理に力を入れることによって、現場では味わえない「違う次元の仕事」ができること
●部下を率いるコツ.......... 会話のとき、部下が心を開くよう、仕事以外の話題から入って自然に仕事の話に導く
●リードする部下.......... 企画・開発メンバーを入れて6人
部下といっしょに横展開のスキームをつくる
OEMビジネスは順調に伸びているものの、「ESET」事業全体でみれば売上比率はまだ10%以下と少ない。営業のリソースも限られており、いかにしてメンバーのモチベーションを高め、奮闘してもらうかが、リーダーの私に課せられた務めだ。2014年度は、前年度実績のような67%成長はさすがに難しいと思うが、少なくとも50%の成長は果たしたいと考えている。部下たちは、口に出して言うわけではないけれど、「それは無理だろう」と思っている者もいることだろう。「ESET」事業を伸ばすためには、OEMビジネスでもっと実績を上げなければならない。部下たちに方針を納得させて、積極的に営業に取り組んでもらうために、常に私たちが取り組んでいる仕事の重要性を声を大にして訴えている。
私は社内では「部下をぐいぐい引っ張るリーダー」とみられている。当社でファイアウォール製品の営業を担当したときからチームをまとめる活動のおもしろさを体感して、まず自分が基盤を築き、次に部下を動かすという方式を身につけてきた。今、力を注いでいるのは、銀行向けの提案の有望性をSIerに訴求することだ。銀行のインターネットバンキングを利用する人たちを狙うサイバー攻撃がひんぱんに起きているとマスコミに報道されている。銀行は、セキュリティの対策をきちんと講じなければ信用を失いかねないので、「ESET」を購入し、顧客に無償で配布するというようなサービスに対するニーズが高まっていると捉えている。実は先日、ある地方銀行にこうした提案をしたが、残念ながら受注には至らなかった。しかし、例えばここ数年続いている酷暑の夏場には銀行へ行くのがめんどくさいと考える人が多くなって、インターネットバンキングの利用者が増えるかもしれない。そうなれば、セキュリティ需要が旺盛になるとも考えられる。だから、めげずに営業活動を続けていく。そして、私が獲ってきた案件に部下も巻き込んで、部下が主体になって横展開するためのスキームをつくりたいと考えている。
私は一日のうちの半分は外に出て提案のネタを拾い、半分は社内にいて部下との徹底したコミュニケーションに費やしている。お客様と話すのはとても大切だが、お客様から聞いたことを、時間をかけて社内で現場担当に正確に伝えなければ、顧客ニーズにていねいに応えることができないからだ。メールや情報共有ツールよりも、直接の会話を大事にする。営業担当者だけではなく、技術担当者ともよく会話をして、彼らが使う難しい用語を自分なりにかみ砕いて、部下やお客様に対してわかりやすく“翻訳”することを心がけている。
[紙面のつづき]今年は「ESET 月額版」に挑戦、事業も自分も新しいステージへ
私はいま、キッティングを手がけるシステムインテグレータ(SIer)にウイルス対策ソフト「ESET」をプログラムとして提供する営業部隊を率い、あわせてキッティングを切り口としたビジネスユニット(BU)のリーダーを務めている。
今年は、「ESET」を新たに月額版として提供するプロジェクトを成功に導きたい。その準備段階として、現在、企画・開発・営業の連携をより一層強くするために、社内コミュニケーションの徹底強化を図っている。月額版をツールに、これまでの年間版でリーチすることができなかった市場を開拓し、「ESET」事業部のなかでキッティングBUの存在感を高めていきたい。
私はいまの業務に就く前に、ファイアウォール製品「SonicWALL」の営業に携わっていた。実はそのとき、新しい挑戦を求めて転職を考えていた。ところが上司に相談したら「ぜひ残ってほしい」と強く言われ、結果として、まったく違う製品を担当し、体制づくりからチャレンジする現在の部署に異動した経緯がある。私は自らが現場に出て商談を進めることにもやり甲斐を感じるが、リーダーとしてユニット全体を動かすことが、いまの仕事の一番おもしろいところだと思っている。今後もバリバリと管理職の道を歩み、違うステージの仕事に挑んでいきたい。

高級感を醸し出すモンブランの万年筆をジャケットの胸ポケットに差し、「信頼できる人物」をアピールする。日頃、メモ取りに使うのは、「書きやすいので、100円のボールペン」だそうだ。