霞が関のリーダーに核心をただす!

<霞が関のリーダーに核心をただす! IT政策をどう進めるかネックは何か>経済産業省 情報通信機器課長 荒井勝喜 氏 ――施策の目標実現に向けた課題

2014/06/05 16:04

週刊BCN 2014年06月02日vol.1532掲載

語る人
荒井勝喜 氏
経済産業省 情報通信機器課長

プロフィール 1991年、通商産業省入省。1994年、ペンシルバニア大学ウォートン・ビジネススクールに留学し、帰国後、大臣官房広報課長補佐。以後、公正取引委員会経済取引局調整課長補佐、経済産業政策局産業組織課長補佐、製造産業局政策企画委員、経済産業局政策課企画官などを歴任し、昨年7月より現職。


得意分野のリソースを持ち寄るM&Aが必要

 日本企業の設備投資は、海外にどんどんシフトしてきており、国内のIT市場にとっての問題になっている。国内の設備投資を喚起し、ITの需要を高めていくためには、為替、電力料金、法人税、FTAなど、さまざまなファクターがあるが、規制緩和を進めて、国内の競争条件をよくしなければならないことは間違いない。

 一方、ITベンダーは市場環境の急激な変化に対応しなければならない。多くのベンダーは、得意分野のリソースを持ち寄って、海外企業を含む他社とアライアンスを組むことで、ようやくビジネスで勝っていけるのではないか。日本は他の先進国と比べてM&Aが少ないし、動きも鈍い。

 経済産業省としても、税制優遇措置などで企業のM&Aを後押ししてはいるのだが、いい出会い、いいパートナーを見つけるのにみんな苦労している印象だ。有益な情報を収集したり、情報を共有できるプラットフォームづくりも必要だろうと考えていて、その実現を主導するのも情報通信機器課の大きな役割だと思う。

 具体的なスキームとしては、産業競争力強化法に基づいて設立された官民出資の投資ファンドである産業革新機構にそうした機能をもたせるのも一つの考え方だ。産業革新機構は企業の再編案件も数多く手がけていて、資金面でもバックアップできる。

ベンチャーに資金と人材が流れる仕組みをつくる

 IT産業の活性化と成長には、ベンチャー企業の存在も欠かせない。大企業では、時代の変化についていけなくなってきている。

 ただし、ベンチャーに流れる資金と人材が、日本ではまだまだ少ない。経産省は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とも協力し、大企業からのスピンアウトベンチャー誕生を後押しする仕組みづくりの検討を進めてきたが、海外の政府系官民ファンドとの連携を模索するなどして、資金調達の道筋を整備しなければならないと考えている。国内にはベンチャーキャピタル(VC)も少ないし、投資会社全般の傾向としてリスクを取りたがらない。

 出資する側がリスクを取らないことを解決する手法は税制優遇措置などしかなく、産業競争力強化法でそれも一部実現し、大企業がVCに出資するための資金を準備金として積み立てできるようにした。しかし、これだけでは施策としてまだまだ不十分。ここでも産業革新機構の機能を高めるのが重要な施策になるだろう。(談)(本多和幸)
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