語る人
間宮淑夫 氏
経済産業省 情報政策課長
プロフィール 1987年、通商産業省入省。地域振興、エネルギー、マクロ経済、中小企業、クリエイティブ産業など、幅広い政策分野を経験。内閣府経済財政諮問会議担当参事官、経済産業省経済産業政策局調査課長、繊維課長兼ファッション政策室長、中小企業庁企画課長、資源エネルギー庁省エネルギー新エネルギー部政策課長などを歴任し、昨年7月から現職。
必勝法がない時代 だからこそチャンス
日本国内だけでなく、世界的にみてもビジネスを展開するうえでの必勝法は存在しない時代になっている。日本のITベンダーには、だからこそチャンスがあることを胆に銘じてほしい。
既製服が生まれて以降、オーダーメードのスーツは少なくなったが、消滅してはいない。顧客に価値を提供して生き残っているテイラーもある。IT産業にも同じことがいえる。日本企業の社内システムは、いまだに手組みだったり、カスタマイズを重ねたりして、ガラパゴスだと批判されることも多いが、「オーダーメードの服づくり」を完全に捨て去る必要はない。ただ、現状のままではビジネスが伸びないのも確か。要は、そのノウハウ、つまり積み重ねてきた強みをどう生かすかを考えるべきということだ。
今年はWindows XPのサポート切れとか消費税改正といったトリガーがあったが、国内のIT投資は、少子高齢化が進んで内需が下がれば自ずと下火になるだろう。海外に出るか、国内のマーケティングを精緻化するか、事業領域を広げるか、採りうる選択肢はそれほど多くない。
サービスとモノを組み合わせた新ビジネス
産業全体を俯瞰してみると、これまでビジネスで勝つための方法は大別して三つあった。まずは製品・サービスの価格を下げること、二つ目は事業の規模を大きくすること、三つ目は繊維メーカーの例などに顕著なように、既存の資産を生かして新しい市場を開拓するということだが、これらはやり尽くされている感がある。
ただ、三つ目はまだ戦略として賞味期限切れとはいえないのではないか。例えば、Appleはハードとソフトの組み合わせで新しいビジネスを成功に導いた。サービスとモノを組み合わせ、従来とは違う角度から新しいソリューションモデルをつくりだすことができれば、チャンスはある。すぐにコモディティ化するようなビジネスではないからだ。
具体的には、商務情報政策局が進める四つの政策分野である、「IT」「ヘルスケア」「サービス産業」「クールジャパン」を横断的に組み合わせて、新しい商材を開発するのもおもしろいだろう。そのためには、新しいことに果敢にチャレンジする精神が必要だが、シリコンバレーに乗り込まなくても、国内にも市場はできつつある。日本のベンダーは、底力をもっている。自信をもってチャレンジしてほしい。(談)(本多和幸)