語る人
間宮淑夫 氏
経済産業省 情報政策課長
プロフィール 1987年、通商産業省入省。地域振興、エネルギー、マクロ経済、中小企業、クリエイティブ産業など、幅広い政策分野を経験。内閣府経済財政諮問会議担当参事官、経済産業省経済産業政策局調査課長、繊維課長兼ファッション政策室長、中小企業庁企画課長、資源エネルギー庁省エネルギー新エネルギー部政策課長などを歴任し、昨年7月から現職。
新IT戦略が課題解決を加速させた
ビッグデータ、オープンデータの利活用については、個人情報保護とデータ利活用のバランスをどう取るかが大きな課題となっている。現状のままでも、データを活用した新しい産業が生まれる可能性はあるが、経済産業省のミッションである産業振興の立場からいうと、もっとデータ流通の自由度を高めていく必要があると考えている。
前回説明したように、次の通常国会で個人情報保護法の改正案が成立すれば、データ利活用の流れが加速し、課題は解決に向かうことになる。その背景には、昨年、新たなIT戦略「世界最先端IT国家創造宣言」が策定されたことが大きな促進要因として働いている。政府CIO、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)が司令塔の役割を果たし、各省庁の立場の違いを越えて、一つの戦略の下に施策を実行できるようになった。ビッグデータ、オープンデータの活用も、しっかりと新戦略のなかに施策の方向性が明記されたことで、阻害要因を取り除く法整備の動きなどが加速したといえるだろう。
情報セキュリティは人材不足が深刻
一方、情報セキュリティ対策の課題は、ずばり人材不足だ。セキュリティ対策が必要な場面はどんどん拡大している。ニーズに見合うスキルをもつ人材を、ユーザー企業側も育成していく必要があるだろう。経産省の役割は、そのための啓発活動を展開していくことだと考えている。セミナーやシンポジウムを開催しているほか、情報セキュリティアイドル「セキュリーナ」というキャラクターをつくり、情報発信のすそ野を広げる努力をしている。
さらに踏み込んだベンチャー支援が必要
IT産業振興のためのベンチャー支援では、企業内ベンチャーの初期の資金を補助するというのは比較的成果が出やすい有効な施策と捉えている。また、独立系のベンチャー企業については、協業先やベンチャーキャピタルなどの出資者とのマッチングをサポートする施策は、従来よりもきめ細かなものを考えていかなければならない。ベンチャー投資促進税制や、起業家教育推進事業、新事業創出を支える支援者の育成事業など既存の施策も成果は出つつあるが、これで十分とはとてもいえない。中小企業支援の各種施策も活用しながら、さらに一歩踏み込んだ施策を検討していきたい。(談)(本多和幸)