語る人
岸本哲哉 氏
総務省 情報流通行政局
情報通信利用促進課長
プロフィール 1992年文部省入省。初等中等教育局小学校課、徳島県教育委員会教職員課長、大臣官房総務課専門官(教育改革官室)、初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐、同学校評価室長、同参事官(学校運営支援担当)などを経て、2014年7月より現職。
自治体に丸投げでは教育ICT化は進まない
教育環境のICT化を促進するには、どんな取り組みをすると、どんな効果が期待できるのかということを、全国の学校関係者はもちろん、地方自治体の首長や議会をはじめ、広く国民のみなさんにも、はっきりとわかりやすく示していかなければならない。これは大きな課題だ。
教育用ICT機器については、地方財政措置によって、自治体の裁量で整備が進められるようになった。しかし、教育ICT化は、自治体に丸投げではなかなか進まない。
国がデジタル教材の流通基盤を整備するとともに、ICT活用がもたらすメリットについて、さまざまな場面に応じた具体的な事例をつくる役割を果たす必要があると考えている。「先導的教育システム実証事業」で、まずはそうした成果をしっかりと示したい。
授業支援システムと校務システムが分断されている
来年度予算の概算要求では、教育ICT化に今年度予算の倍額を要求している。それは、単純に事業を拡大するということではない。デジタル教材を提供するクラウドをベースに、先端のICTを組み合わせて、さまざまな主体や場面がシームレスにつながる効果的な教育ICT化のモデルをつくりたいという意図がある。
例えば、授業支援システムと、学籍管理や成績処理などの教員の校務を支援するシステムを連携させて、学習記録データを統合的に蓄積・活用し、児童生徒を多角的にケアしていく取り組みを実証したい。私は校務の情報化施策に携わったことがあるため、学校内の各種システムがバラバラに構築されていて、データを一元的に扱う状況にはないという現場の実情をよく知っている。その現状にずっと課題意識をもっていたので、来年度事業では、ぜひとも解決策を見出したい。まずは予算の確保に全力を尽くす。
また、ICT人材の育成や高齢者向けのICTリテラシー向上策などにおいても、国の役割をあらためて考える時期にきている。例えば、プログラマの育成に関しては「足りない」という声がある一方、「今重要なのは、むしろ企業内でICTの利活用によって諸分野間のコーディネートができる人材を育てること」との声もあり、施策の方向性を簡単には決められない。試行錯誤しながら最適なかたちを模索しているところだ。(談)(本多和幸)