何かのクラウドサービスを利用するとき、他のクラウドサービスや既存の情報システムと何の依存関係もなく独立して利用することは考え難い。では、異なるクラウドサービスプロバイダによって提供されるコンピューティング資源やアプリケーションサービスをいろいろと組み合わせ、また既存の情報システム資源と統合して利用することを考えるときには、どのようなことに注意を払い、工夫を凝らす必要があるのだろうか。

　現在、市場で提供されているクラウドサービスが、いつまでもそのまま提供され続けられることはあり得ないだろう。常に市場競争に晒されるクラウドサービスは、コスト面ばかりでなく、その機能やユーザビリティが継続して革新することが求められるので、新たな機能の追加やインターフェースの変更が随時行われるという前提で利用せざるを得ない。だが、そのつどそれと連携するプログラム・インターフェースを書き替えねばならないというのではたまらないし、ましてやユーザー・インターフェースをたびたび書き替えることなど、許されることではない。また、よりよいクラウドサービスが新たに出てきた場合には、廉価なコストで円滑にそれに移行できるような備えも必要である。その意味で、個々のクラウドサービスのプログラム・インターフェースに縛られないように疎結合で業務プロセスを組み立てて、個々のクラウドサービスに縛られないようにユーザー・インターフェース部を分離して開発する方法を採るなどの工夫を凝らすことが大切である。

　このような視点で昨今のクラウドサービスを眺めてみると、もはや新しいとはいえないが、IFTTT（IF This Then That、「これならば、あれをする」の意）やZapier（zapは「すばやく動かす」の意）のようにクラウドサービスを組み合わせて、プログラムを書くことなくワークフローを記述するクラウドサービスがすでに存在していることがわかる。興味深いことに、これらのクラウドサービスは、スマートフォンやセンサ制御機器とのクラウド上での連携までもサポートしており、ここで述べたような考え方を実証的に裏づけるものの一例と考えることができる。

　これからは、このようにクラウドサービスを組み合わせて、自分に適したサービスを組み立てるクラウドサービスが増えてくるものと期待される。