PaaSの「Bluemix」は、米IBMにとって、クラウド市場の覇権奪取に向けたキーとなる商材の一つだ。ポイントは、いかにデベロッパーの支持を集め、ユーザーに新しい価値を提供できるアプリケーションを増やしていくかにある。サンディ・カーター・エコシステム・デベロップメント担当ソーシャル・ビジネス・エバンジェリストは、新たなエコシステム構築に向けた取り組みとして、起業家や若手技術者の支援にも注力していることを説明してくれた。(本多和幸)
サンディ・カーター
エコシステム・デベロップメント担当ソーシャル・ビジネス・エバンジェリスト
──米IBMは、Bluemixをはじめとする新しいテクノロジーを活用してソリューションを提供しようとする起業家に対する支援策として「IBM Global Entrepreneur Program」を打ち出すなど、従来とは異質のエコシステム構築に取り組んでいる。 カーター IBMが彼らをリクルートするというよりも、アプリ開発を行うスタートアップなどがどんどんIBM側にコンタクトしてきてくれるという状況になっている。Global Entrepreneur Programを発表した際には、10時間以内に約1000社の新興企業から応募があった。彼らは、ソーシャルネットワークで横のつながりもあるので、「IBMがおもしろいことをやり始めた」という情報が広がって、市場に評価されたのだろう。プログラムそのものも、IBMから12万米ドルが支給され、IBMのクラウド環境も使い放題、サポートも受けられるという魅力のあるものだと考えている。
ITベンチャーがもっているスキルとユーザーが必要としている要件のマッチングをIBMが支援する取り組みも行っていて、新しいパートナーには非常に好評を博している。クラウド時代の新しいソリューションをユーザーに提供するためのエコシステム構築は、着実に進捗している。
──自治体とタイアップした起業家支援も行っているとか。 カーター ニューヨーク市公式のスタートアップ向けコミュニティサイト「Digital.NYC」を、IBMがスポンサーとして支援している。起業家や若手の技術者などを対象に、求人情報や投資家情報、開発のためのオープンスペースの情報、デベロッパーが集うイベント情報などを提供していて、スタートアップの育成に関する成果が出てきているし、コミュニティも育っている。ロンドンなど、他の地域への横展開も考えているが、地域によって、集まる人たちの属性や興味、関心は異なるだろうし、多様なコミュニティが世界中でできていくのはポジティブなことだと思う。
多様性を重視しているという意味では、女性技術者の支援にも力を入れている。
──具体的には? カーター 「Girls Who Code」というNPOを支援している。非常に残念なことだが、今のアメリカでは、コードを書いてアプリを開発する仕事は、アナリストやコンサルタントとは違って、社会的な評価が低い。本当はクリエイティブで大事な仕事。IT業界で輝いている人材を掘り起こし、若手のうちからプロモーションしていく。