日本オラクルが4月に都内で催した「Oracle CloudWorld Tokyo 2015」には、ラリー・エリソン会長兼CTOとマーク・ハードCEOの両首脳が顔を揃えた。「ラリーと私が二人とも同じイベントで登壇することは滅多にない。それほど、クラウドと日本市場に対するわれわれの注力度合いが強いということ」と話すハードCEO。日本市場でのクラウドビジネス拡大への強い意志を表明するとともに、クラウド市場でのオラクルの強みについて、しきりに訴えた。(本多和幸)

マーク・ハードCEO 「2015会計年度(2015年5月期)の第3四半期決算では、ほとんどのプロダクトラインが成長した」。マーク・ハードCEOは日本のメディアを前に、そう誇らしげに話を切り出した。ハードCEOはこう続ける。
「とくに好調だったのがクラウド。SaaSで800、PaaSで400の新規顧客を獲得した。従来のオラクルアプリケーションユーザーがクラウドに移行するというよりも、多くはまったくの新規のユーザー。このままのペースでいけば、通年でクラウドビジネスの売り上げは20億ドルを超えるだろう」。
エリソン会長兼CTOはOracle CloudWorld Tokyo 2015の基調講演で、「競うべき相手はもはやIBMやSAPではなく、セールスフォース・ドットコム(SFDC)やアマゾン」だと話したが、ハードCEOはこの新たなライバルの1社であるSFDCを引き合いに出し、自社のクラウドビジネスの成長ぶりを際立たせる。
「重要なのは、オラクルのクラウドビジネスの成長スピードが加速していることだ。通常、ビジネスの規模がある一定の水準に達すると成長スピードは鈍化していく。SFDCがまさにその状態にあるが、オラクルは違う。より多くの製品をグローバルで展開することで成長を加速させている」。
もう一つ、ハードCEOの今回の発言で注目すべき点は、「Oracle Exadata(エクサデータ)」などのハードウェアのビジネスやOracleデータべースのライセンスビジネスも、クラウドビジネスと同様に「今後も成長が見込める」としたことだ。
「今期末にはハイエンドサーバーの最大手メーカーはオラクルになると思っている」と、ハードCEOは語気を強め、以下のように付け加える。
「従来のコアビジネスであるデータベースのライセンスも好調だ。われわれの信条は、ハードウェアとソフトウェアの両面で革新的なテクノロジーを用意し、統合・最適化して最高のソリューションを提供することだ。例えば、エクサデータに代表される垂直統合型の製品は、データベース・システムとして圧倒的なパフォーマンスを発揮している」。
オラクルのデータベースは、エンタープライズシステムの領域で圧倒的なシェアをもち、ある意味で、多くの企業のデータ資産を手中に収めている。ゆえに、オンプレミスかクラウドかにかかわらず、ビッグデータの利活用やIoT(モノのインターネット)の潮流のなかでオラクル製品が活用されるケースや、ハイブリッドクラウドを指向するクラウドプラットフォームのなかで、オラクルのデータベースが採用されるケースが今後も増えていく可能性は大いにある。仮にそうなれば、クラウド市場が拡大するなかでも、オラクルの従来ビジネスが成長を続けるかもしれない。