サンディスクが、近年エンタープライズ市場でのビジネス領域を急速に拡大している。ビッグデータやIoTなどの分野でストレージに性能・容量の両面が求められるなか、デバイスからストレージアレイまで、さまざまな形態でフラッシュ製品を提供できる体制を構築し、フラッシュ市場の拡大を加速する。(日高 彰)
東芝と共同出資する四日市工場(三重県)で、全世界のフラッシュメモリ需要の半分近くに相当する量のメモリチップを生産するサンディスク。民生市場でおなじみのメモリカードや組み込み、OEM形態でのフラッシュメモリの提供を主力としてきたが、ここ数年、企業のITインフラをターゲットとする事業を急速に拡大している。
2014年には、サーバーのPCI Expressスロットに装着する形式のフラッシュストレージを手がけるFusion-ioを買収し、「Fusion ioMemory」の名称で製品ポートフォリオに加えた。この製品はいわば超高速のSSDだが、サンディスクではSSDではなく「アプリケーション アクセラレータ」と呼んでいる。従来のストレージに比べ、データの読み書きが大幅に高速化され、データがメモリ上に転送されるまでの待ち時間が削減されるので、アプリケーションの性能が向上するとともに、システムの利用効率も改善される。以前であれば、大量のディスクを搭載する巨大なストレージシステムでなければ出せなかった性能が、サーバーに内蔵する拡張カードで実現可能となる。近年、リアルタイムでのデータ集計や、映像の分析といった、ストレージI/Oの速度がパフォーマンスに直結する作業負荷が増加していることから、引き合いが増えているという。 サンディスクが昨年11月より日本市場で提供を開始したのが、オールフラッシュストレージの「InfiniFlash」だ。これまでデバイス製品を中心としていた同社が、いよいよシステム製品へ進出した格好となる。3Uサイズのシャーシに最大512TBのフラッシュカードを搭載できるので、性能に加えて記憶容量の密度も圧倒的に高い。
フラッシュメモリの低価格化が進んだことで、ストレージ市場ではオールフラッシュ製品の販売が伸びているが、InfiniFlashは「重複排除・圧縮などの機能を使わなくても、1GBあたりの単価を1ドル以下に抑えた」(サンディスク エンタープライズセールスの奥村英記・リージョナルセールスディレクター)といい、競合製品に比べてさらに低コストであることをアピールしている。これはフラッシュアレイのみの価格で、実際にストレージシステムを構成した場合のコストは上昇するが、それでも同社によれば1GB単価は2ドルを切り、オールフラッシュ製品としては安い。
InfiniFlashのもう一つの特徴が、ソフトウェア定義型のストレージ技術を全面採用していることだ。この点で、InfiniFlashの拡販ではパートナーを巻き込んだエコシステムの確立が非常に重要になる。(つづく)

高性能・高密度かつ低価格を実現する新製品「InfiniFlash」