メディアマートの多田慶太代表取締役は、もともと日本ヒューレット・パッカード(旧日本HP、現HPE)に在籍し、そこからスピンアウトしたかたちで同社を立ち上げた。旧日本HPの下請けビジネスを中心に業績を拡大してきたが、2008年のリーマン・ショックは、新規ビジネスへの挑戦を余儀なくさせた。活路を見出したのは、「ハードウェアのノウハウを生かしたクラウドビジネス」。独自のビジネスモデルで継続的な成長への礎を築きつつある。(取材・文/本多和幸)
Company Data会社名 メディアマート
所在地 東京都
資本金 6719万8659円
創業 1998年1月
社員数 179人
事業概要 エンジニアリングサービス事業、セールスサービス事業、クラウドPBX事業
URL:https://mediamart.jp/ リーマン・ショックを機にクラウドへ

多田慶太
代表取締役 メディアマートは、1998年の設立以来、エンジニアリングサービス事業とセールスサービス事業を長らく二本柱として経営してきた。両事業をひと言で説明すれば、エンジニアリングサービスはサーバーの導入支援サービス、セールスサービスはハードウェア営業のアウトソーシングサービスだ。旧日本HPからスピンアウトしたという経歴から想像できるとおり、旧日本HPの下請けとしての仕事からスタートしたという。
2000年代初頭から半ばまでは、両事業とも順調に成長したが、転機を迎えたのが、08年のリーマン・ショックだ。多田代表取締役は、「ほぼ右肩上がりできていたのが、二つの事業とも急に業績が下がり、新しいビジネスの軸をつくらないといけないという危機感が大きくなった」と振り返る。事実、08年度(09年3月期)は約11億円だった売り上げが、翌09年度(10年3月期)には約9億円に急落している。
新しい軸として、太陽光発電システムやLED電球の販売など、ITの範囲を超えて可能性を模索したが、当時はまだまだコストも高く、事業としての成長が見込めそうにもなかった。やはり、新規事業といえども、自社の強みを生かして既存事業とのシナジーを出せるもののほうが成功の可能性は高い。そこで目を付けたのが、クラウドだ。ストックで売り上げを積み上げ、ある程度安定したビジネスモデルを構築できるのも魅力だった。
ただし、言うまでもないが、クラウドビジネスとひと言でいっても、その形態はさまざま。メディアマートが手がけるクラウドビジネスは、クラウド化されていない有望なソフトウェアを発掘し、ソフトウェアベンダーとアライアンスを結んだうえでクラウド化し、オリジナルブランドで販売するというものだ。
エンジニアリングサービスで培ったハードウェアのノウハウをもとに、クラウドインフラを自社で用意して、その上に既存ソフトウェアを乗せてクラウドソリューションに仕上げる。多田代表取締役は、「ハードウェアを知り尽くしているというアドバンテージを生かし、自社でクラウドインフラを構築・運用することで、大手パブリッククラウドなどを使うよりもずっと安いコストでクラウドサービスを提供できる」と説明する。
そして、セールスサービスでは、プリセールスからポストセールスまでIT企業のあらゆる営業活動を網羅したサービスを展開してきており、インサイドセールスのノウハウも蓄積してきた。これらのリソースを、クラウドの新規ビジネス拡販にも活用した。まさに、既存事業の強みを生かした新規事業だったわけだ。
継続的に新規ビジネスを開拓
新規事業の具体的な商材の先駆けとなったのが、クラウド型IPーPBXマネージドサービスの「VーSQUARE」だ。シスコシステムズの「CallManager」のユーザーがリプレースで採用するケースが多いという。ソフトバンクの法人営業でも取り扱いを始めており、ソリューションプロバイダとして、パートナーとの協業による販路拡大にも急ピッチで取り組んでいる。
クラウド統合認証基盤「クラウドスマートゲート」も、主力商材に育った。端末認証とシングルサインオンを中心としたサービスで、社内システムに、外部からスマートデバイスでセキュアかつスムーズにアクセスできるようにするというコンセプトだ。これは、大手航空会社での採用実績がある。
また、クラウドビジネスではないが、2年前からは、「人との縁がきっかけで」(多田代表取締役)、IBMの統計解析ソフト「IBM SPSS Statistics」の販社としても活動している。ここでもセールスサービスのノウハウが生き、短期間で医療機関向けではトップシェアになった。多田代表取締役は、「医療分野はリーマン・ショックでもIT投資が落ちなかった」と、リスクヘッジを兼ねた成長分野の開拓に余念がない。最近では、SPSS Statisticsの実績がマーケットでも評価され、デルとも協業するなど、ビジネス拡大のための施策を着実に進めている。さらに、今年3月には、「IBM Watson 日本語版ハッカソン」に出場して優勝。新しい領域にビジネスを広げるチャレンジは継続している。
現状では、当初の二本柱以外の新規事業が、売り上げの20%弱を占めるようになっている。多田代表取締役は、「ラグビー日本代表のエディ・ジョーンズ・元ヘッドコーチは、日本人の強みを徹底的に考えて結果を出した。ビジネスも同じで、自分の強みをどう生かすかが大事。当社の強みを生かすことができた新規事業は非常に好調で、既存事業をなるべく早く上回るようにアクセルを踏みたい」と意気込んでいる。