「中国から来た多くのエンジニアが日本で活躍の場を探している」ことを知ったTRUST SOFTの佐久間昌宏代表取締役社長は、中国人エンジニアの受け皿となるべく、貿易業を営んでいた会社をSIerへと大きくシフトさせた。現在ではSES(System Engineering Service)を業務の中心として、社員の9割を占める中国人エンジニアの活躍をサポートしている。「中国の人はハングリーで、向上心が強い」と佐久間社長。中国の人脈を生かしたマッチングサービスの開発にも取り組んでいる。
Company Data会社名 TRUST SOFT
所在地 東京都台東区
資本金 1000万円
設立 2000年4月
社員数 10人
事業概要 SES(System Engineering Service)、ソフトウェア開発、ネットワーク構築、運用保守など
URL:http://www.trust-soft.co.jp/ 中国人エンジニアのSES

佐久間昌宏
代表取締役社長 優秀な人材が常に不足しているとされるIT業界。一方で、優秀なエンジニアでありながら、仕事をみつけられない、会社になじめないということがある。なかでも中国人エンジニアには、そのケースが多いと知った佐久間社長は、中国人エンジニアのSESを事業の柱にした。
「中国に住んでいたことがあるため、人脈があった。中国人エンジニアが活躍できる場があれば、高い技術力をもっているので、日本の社会に貢献できる」との思いがあった。採用してわかったのは、中国のエンジニアは勤勉で生産性が高く、精神的にタフだということ。COBOLのような古くからある言語を習得しつつも、Pythonのような比較的新しい開発言語の習得にも積極的であるなど、多様なニーズに応えられるため、高い単価で仕事を請け負うことができるという。
SESの将来には疑問
中国人エンジニアが中心のSES事業を展開しているTRUST SOFTだが、いつまでも現在の状況が続くとは考えていない。「昨年まではエンジニア不足の状況が続いていたが、最近では大型案件が減った影響もあり、業界のピラミッド構造の下層にいる企業が仕事を獲得しにくくなっている。その影響もあって、エンジニアが余りだし始めたと感じている。SESの案件が減れば、中国人をはじめとする外国人よりも、日本人を優先する可能性が大きいので、今後は中国人エンジニアが中心のSES事業が厳しくなるかもしれない」と佐久間社長は想定している。
そこでTRUST SOFTがまず目指すのは、下請けから脱却して、元請けになること。同社の社員の半分以上は中国人エンジニアであり、前述のとおり、とても優秀であることから、マネージメント層を育てることで、元請けとなるための体制を整えているところである。
また、「IoTやAI(人工知能)、FinTechといったキーワードに乗り遅れないようにしたい。エンジニアが余りだしたとしても、こうした新しいキーワードに関連する分野では人材が不足している。そうした市場のニーズにしっかりと応えられるようにしたい」と佐久間社長は語り、こうした新分野でのニーズに応えることで企業規模を拡大していこうとも考えている。
独自サービスの開発に注力
TRUST SOFTはまた、脱SESの戦略として、自社サービスの開発にも取り組んでいる。「中国人エンジニアの人材DBを共有できるプラットフォーム、つまり、エンジニアと採用側とのマッチングサービスになる。これを社内のエンジニアで開発していて、年内にはサービスを開始することを予定している」。この人材DBには、オフショア開発を担う中国在住のエンジニアの登録も考えている。中国では人件費が高騰した影響から、日本のオフショア開発を担うのは難しいとの声もあるが、佐久間社長の考えはポジティブだ。
「確かに中国の人件費は高騰している。ただ、内陸部はまだ十分に競争力がある。内陸部のエンジニアのネットワークもあるので、マッチングサービスは十分に機能すると考えている。中国の経済に対してネガティブな意見もあるが、成長は維持していると確信している」。今後も、中国人エンジニアを中心にビジネスを展開していくとしている。
そして、SIerとして目指すのは、個性と特徴のある技術者集団である。佐久間社長には、最新テクノロジーに対して、次のような信念がある。「テクノロジーは、うまく使わないと人間をダメにする。しっかり生活の役に立つようなテクノロジーの活用をしていきたい」。テクノロジーの未来に向けて、TRUST SOFTは新たな展開を目指す。