CAC Holdingsグループ(CAC-HDグループ)は、欧米スタートアップ企業のAI(人工知能)や感情コンピューティングの先端技術をいち早く国内に導入し、オープンイノベーション方式による事業化を推進しているが、越えなければならない壁がいつくか存在する。(安藤章司)
感情コンピューティングは、人の感情を読み取る技術で、人間社会に溶け込むことが求められている社会性をもったロボットの必須技術とされる。欧米では早くから注目を集めている領域で、言葉だけでなく、感情も読み取ることで、人間とロボットのより円滑なコミュニケーションを実現するものだ。

CAC-HDグループにとって重要なのは、国内での迅速な事業化、収益化である。しかし、AI絡みの領域で共通にいえることだが、それそのものでは事業化は難しい。顧客やビジネスパートナーとの実証実験やアイデアソンなどを繰り返しながらイメージを膨らませ、どうやったらビジネスとして立ち上がるのかの“イノベーション”を起こさなければならない。ユーザーの情報システム部門から仕様書をもらって開発する受託ソフトとはまったく異質なアプローチである。
CACの鈴木貴博・執行役員AI&ロボティクスビジネス部長は、「ここにソフト開発の自動化やアジャイル開発の経験が生かせる」とみている。同社ではソフト開発の自動化基盤「AZAREA(アザレア)」を独自に開発。従来のように出来上がってみないと使い勝手やUIデザインがわからないといった開発手法から、顧客の話を聞きながら「こんなイメージでしょうか」と、すぐにプロトタイプを提示できるのがAZAREAの最大の強みだ。
実際にユーザーに使ってもらって「いや、そうじゃない」「ここはいいんだが、あそこはもうちょっとこう直してくれ」などとやりとりしながら完成度を高めていくアジャイル的手法は、同社が着目するAI領域にも「大いに役立つ」と鈴木執行役員は話す。
AZAREAで培ったアジャイル的手法、あるいはアジャイル的価値観を一段と醸成し、社内に広めていくことがオープンイノベーションをより実りのあるものにするというわけだ。AI領域でも、まずはプロトタイプをつくって顧客やビジネスパートナーと意見を交わし合いながら完成度を高めていくアプローチが欠かせないだけに、「AZAREAで経験したような“価値観の入れ替え”が伴う」(鈴木執行役員)と指摘している。