NPO法人の日本情報技術取引所(JIET)は、設立20周年を機に、海外への展開を積極的に推進している。その一つが、台湾の中心都市である台北。国際的にはハードウェアメーカーの集積地としてのイメージが強い台北だが、ソフトウェア産業も発達している。親日であることもプラス要因であり、日本のシステム開発案件の有力な担い手として期待される。台北のSIerにおいても、日本のオフショア案件を請け負いたいと希望する声が多いという。これらを見据え、JIETは3月にIT団体初の台北支部設立を予定している。(取材・文/畔上文昭)
台湾の情産協と提携
台北支部を設立するにあたって、設立担当に就任した齋藤康嗣理事。齋藤理事は、北海道に在住していて、JIET北海道支部の副支部長を兼任している。その齋藤理事が、なぜ台北支部の設立担当を引き受けたのか。
齋藤康嗣
台北支部設立担当
「国際ロータリーの活動をしていて、台北市を中心とする第3480地区との交流があった。福祉施設を訪問したり、マイクロバスを寄付したりするなど、13年ほどのつき合いになる。台北には、50回以上行っているのではないか。その関係で台北の政財界に知り合いが多く、JIETの台北支部を設立するにあたって声がかかった」と、齋藤理事は台北支部の設立担当に就任した背景を語る。
JIETは、グローバル展開を進めるにあたり、まずはビジネスを展開しやすい地域ということで、親日のイメージが強い台湾を選んだ。
最初にJIETとして台北を訪問したのは、昨年の4月。台北の国際ロータリー経由で、行政機関などと情報交換を実施。台湾のIT系団体である中華民国情報サービス産業協会(CISA)の仲介により、現地のソフトウェア会社にヒアリングするなど、情報収集をスタートさせた。「台湾には、たくさんのソフトウェア開発企業がある。JIETについて説明したところ、ウェブサイトで提供している案件紹介の仕組みを活用したいとの声があった」と齋藤理事。ただ、案件紹介のウェブサイトは日本語であることから、まずは情報交換を目的として、JIETとCISAで昨年10月に覚書を交わした。
台北支部を盤石の態勢でスタートするために、JIETは昨年11月、台北駐日經濟文化代表處の謝長廷代表を表敬訪問。JIET台北支部の設立について説明し、協力を仰いだ。
台北駐日經濟文化代表處の謝長廷代表(右から二人目)
続く12月には、駐在事務所を開設し、齋藤理事が半常駐となって台北支部の設立に向けた取り組みを推進している。「3月20日に台湾支部設立記念式典の開催を予定している。その日までには、登記が完了すると見込んでいる」とし、齋藤理事は、記念式典に50人ほどが参加すると考えている。
目標は会員企業を30社に
台北支部の目標は、ひとまず会員企業を30社にすることに置いている。「台湾JIETとして法人化することを考えている。台湾では、業界団体の法人化には30社以上の会員企業が必要となる。そのため、早期に30社を集めたい」(齋藤理事)。
また、CISAとの協力体制も強化していく。「台湾のソフトウェア企業は、日本のシステム開発案件を請け負いたいと望んでいる。そのため、CISAは日本の情報を必要としているが、これまではほとんど入手できていなかった」ため、齋藤理事はJIETへの期待が大きいと感じている。日本のシステム開発を担うには、言葉の壁や商慣習の違いなどの課題が考えられるが、そのギャップをJIETが吸収して解消していくといったことを考えている。また、台湾の人材を日本に紹介するのも、台北支部の活動として推進していく予定だ。さらに、バンコク支部との連携も検討している。
「台北支部の役割は、日本のシステム開発案件を台湾の会員企業に紹介するだけではない。台湾の会員企業同士の案件紹介もあれば、昨年開設したバンコク支部と連携し、台湾のシステム開発案件をバンコクの会員企業に紹介することもあるだろう」と、齋藤理事は海外支部同士の連携も視野に入れている。
とはいえ、システム開発の単価は、日本の案件の方が高いことから、やはり日本のシステム開発案件を請け負いたいとの声が強いという。これまで中国やASEANを中心に動いていたオフショア市場だが、台北支部の設立によって新たな潮流が生まれると期待される。