ブロックチェーンが既存の金融を含むエンタープライズITの世界に広くインパクトを与えるとすれば、従来、システム構築を担ってきたSIerのビジネスにはどんな影響があるのだろうか。bitFlyer・加納裕三代表取締役のインタビュー第三弾。(取材・文/本多和幸)
―2016年11月末に、銀行間振込業務へのブロックチェーン適用を模索した3大メガバンクの実証実験に関する報告書が出た。この実験ではbitFlyerのmiyabiが採用されていて、ハード、ソフトの購入費、アプリケーション開発費ともに削減できる可能性を示唆していた。ブロックチェーンが普及していくとしたら、金融のシステム構築に携わってきたITベンダーのビジネスにどんな影響があるか。
加納 当然、変化はあるだろう。システムインテグレーションはなくならないと思うが、例えばこれまでSIerがやっていたBCP、DR対策、多重化のための仕組みといったところは、ブロックチェーンで簡便化される方向にはなるのかなと思う。
とはいえ、例えば今後、銀行の勘定系システムがブロックチェーンに置き換わり、われわれの製品「miyabi」が採用されたとして、SIがゼロになるわけはない。ブロックチェーン上で構築するアプリケーションのレイヤはSIerの仕事だと思っている。画面の開発だけでも膨大な工数になるだろうし、彼らとの協業は不可欠だ。SIerには、ここで付加価値を発揮してもらう余地はある。
―そこは明確にbitFlyerのビジネス領域ではないということか。
加納 われわれは得意なところだけをやりたい。あくまでもコアとなるブロックチェーン技術をプラットフォームとして提供していく方針だ。だから、SIは絶対にやらないし、大手SIerのように人を何千人と雇って人月で稼ぎたいとは思っていない。
ブロックチェーンは新しいデータベース
―いわゆるメーカー側の立場でビジネスをしていくと。
加納 端的にいえば、(RDBのトップベンダーである)オラクルのようになりたいと思っている。これはbitFlyerが最初にやったことだと自負しているが、われわれはブロックチェーンを「新しいDB」と定義していて、この新しい技術にもとづいた製品を広く世の中に浸透させ、そこで圧倒的なシェアをもつトップベンダーになりたいということだ。
―すでにSIerと協業している案件などは出てきているのか。
加納 明確にやっているケースはまだないが、今後大きなプロジェクトになれば協業していくことになるだろう。すでにいくつかの大手SIerとは話をしている。