アジアビジネス探索者 増田辰弘
略歴
増田 辰弘(ますだ たつひろ)

1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。01年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。
途上国が一気に経済発展する時、とんでもいないことが起こる。それをまざまざとみせつけられたのが、ミャンマーのネットビジネスである。4年前のティンセン大統領の軍事政権型市場経済が始まり出した頃は、給料日や工事代金の支払日ともなると会社では車を手配し、ガードマンを雇ってお金を銀行から運んでいた。
街でタクシーに乗る時、車にメーターがない。どこに行くにも交渉である。親切な運転手さんもいるが、外国人だと単価が違ってくる。人のよさそうな日本人だと、カモがネギをしょっているようなものであった。
現在はどうか。一気に電子決済システムである。ただ、給料の銀行振り込みは、聞くと実施しているのは半分程度である。これは、システムの問題ではなく、社員が銀行を信用していないからである。
タクシーについては、オーウエイという新興の会社が、スマートフォンの専用アプリを通じた配車サービスを始めた。うなぎ上りにユーザーが増えている。距離に比例した料金体系だから運転手との料金交渉もなく、外国人だからとぼられることもなくなった。
ミャンマーでは、携帯電話市場の外資開放が2014年である。それまでの携帯電話の利用率はわずか1%である。それがわずか3年で普及率はほぼ100%になった。
多くの場合、ネットビジネスを妨げるのは既存の業界であり、各種の規制である。ところが、ミャンマーではこの業界が固まらず、各種の法規が定まらないうちにネットが入ってきたためすごいことになった。
ミャンマーのネットビジネスは電子決済システム、スマートフォンの専用アプリの配車サービスのほかに、ホテル、航空券、バスの予約サービス、人材派遣、不動産情報サイト、GPS連動の交通関連システムなど、まさに百家繚乱の感がある。
ミャンマー特有のネットビジネスもある。ミャンマー人はスマートフォンはもっているが銀行口座をもたない人が多い。そこで、支払いを請け負うビジネスが登場する。スマートフォンで専用アプリをダウンロードすれば、電気代などの公共料金やネット予約した航空券の代金を支払ってくれる。まさに、堰を切った様にとはこのことである。ミャンマーのネットビジネスは匂うがごとき今盛りなり。
アジアビジネス探索者 増田辰弘
略歴
増田 辰弘(ますだ たつひろ)

1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。01年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。