bitFlyerの加納裕三・代表取締役は、日本ブロックチェーン協会(JBA)の代表理事も務める。新しい市場を創出するために業界団体、さらにはJBAが果たすべき役割をどう考えるのかも聞いた。(取材・文/本多和幸)
―JBAの活動としては、シェアリングエコノミー協会と共同で、東京都の小池百合子知事にも政策提言した。電子自治体の実現とデータ活用基盤の整備にブロックチェーンを活用してほしいという内容だったが、知事の反応は?
加納 ポジティブな反応だった。政策提言までやっているブロックチェーン関連の団体はJBAしかなく、ダイレクトに小池知事に提言する機会をいただくことができた。まさに「ブロックチェーンシティ」をつくり上げていく一歩になればいいと思っている。
JBAの理念として、世の中を便利にするために、社会インフラを変えたい、社会にインパクトを与えたいという思いがある。いろいろなところでみんな不満があって、こうなったらいいのにという声は聞くのに、実際に手を動かして実行する人はほとんどいない。そうであれば、われわれがみんなの声を聞いて、なるべく理想の方向に進むことができるように、これからも突き進んでいきたい。それほど簡単なことではないのも理解しているが。
日本のスタートアップは北米にも負けていない
―FinTech分野で日本はスタートアップのエコシステム育成が遅れているという議論をよく耳にするが、ことブロックチェーンに関しては、そんなことはないという指摘も根強い。加納さんからみたブロックチェーン周辺の状況は?
加納 結局、どの視点でみているかによるということ。視点が違うので見解の相違が起こっているに過ぎない。投資金額や関わっている人の人数でみれば、北米などと比べて日本のブロックチェーンのエコシステムはまだそれほど育っていないのは確か。ただ、個々の企業の技術力で比較すると、私はそんなに遅れていないと思っている。IBMと戦えるような製品も出てきたし、むしろ米国に勝っている部分も多々ある。
―なぜ、日本のスタートアップへの投資は増えない?
加納 投資家は、日本のスタートアップが本当に世界で勝てるのか懐疑的な目でみている。日本企業側の英語での発信が十分ではなかったりするという事情も影響しているだろう。米国がシリコンバレー発の技術/サービスで世界を設計するというモデルができあがってしまっているので、そっちに投資したほうがいいという議論になってしまいがちだと感じている。
bitFlyerは、多少競合したとしても、有望なスタートアップには世界に羽ばたいてもらったほうがいいと思っているので、ファンドを用意してそうした企業を支援しているところだ。