GNSS

　「Global Navigation Satellite System」の略で、「全球測位衛星システム」と訳す。人工衛星を使って地上の位置を示す衛星測位システムの総称として使われる。

　GNSSは、1970年代に米国が軍事用に開発を始めたのが最初といわれている。

　最近は民生用に開放されており、カーナビゲーションやスマートフォン、カメラ、時計などに搭載されている。

　計測範囲は、全地球上が対象となる。上空約2万メートルにある人工衛星から送られる時刻や軌道情報などが含まれる電波を受信し、受信した時間の差から現地点の位置座標を算出する。

　測位方法では、衛星からの電波を1台のアンテナで受信する「単独測位」と、2台以上の受信機を使う「相対測位」がある。

　単独測位は、船舶や飛行機、カーナビなどで利用され、最大で10メートル程度の誤差が出る。相対測位は、センチメートル単位の測位が可能で、測量などで利用されている。

　世界では現在、米国と欧州、中国、ロシアがGNSSを構築している。日本は、GNSSはもたない。将来的にアジア・オセアニア地域が測位できる「準天頂衛星システム」の構築を目指している。

　また、全国1000か所以上に設置した電子基準点と中央局（茨城県つくば市）で構成するGNSS連続監視システム「GEONET」を国土地理院が運用し、地殻変動や測量網の構築に役立てている。

GPS

　米国が運用する「 Global Positioning System」の略。「全地球測位システム」と訳す。カーナビやスマートフォンをはじめ、世界中で最も普及しているGNSSといわれる。

　GPSは、もともとは軍事用に使われていたが、米国から韓国に向かう途中の旅客機が、旧ソ連軍の戦闘機に撃墜された1983年の大韓航空機撃墜事件がきっかけとなり、民生用に使えるようになった。

　米国は現在、約30機のGPS衛星を管理し、約5年に1回、モデルチェンジをして機能を強化している。精度は最大10メートルといわれているが、衛星の配置状況のほか、建物や地形などの周辺環境も影響する。

　民生用の電波は、無料で使うことができる。GPSの運用には、多額の費用がかかるため、日本をはじめ世界中の国が利用している。民生用の製品は幅広く存在し、「地球規模のインフラ」という場合もある。

　米国の意向によって、精度は変えられるとの指摘があり、戦争などの有事の際に、使用が不可となる可能性が懸念されている。過去には、精度を落とす措置が取られていたが、現在は解除されている。

　国際情勢が緊張してくると、インターネット上では「GPSの精度が落ちている」といった書き込みが出る。しかし、米国による意図的な精度操作は明らかになっていない。

　GPSは、米国にとっては強力な外交カードとして使える。政治や軍事の面で米国依存になるのを嫌い、自前でシステムを構築しているのは、欧州、中国、ロシアだけだ。