フェムトラボは、製造業向けのシステムコンサルティングを強みとする会社である。ユーザー企業の業務分析を得意とし、聞き込んだ詳細を仕様書としてまとめる。実際の開発は協力会社に出しているが、システム稼働後は3~6か月の「調整期間」を設定。ユーザーが納得するまでチューニングしていくスタイルをとる。ユーザー企業の経営者から現場担当者までていねいにインタビューを行い、仕様書にまとめあげていく手法が高く評価され、関西地域を中心に引き合いが途切れることがないほどである。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 フェムトラボ
所在地 京都市伏見区
設立 2017年7月
事業概要 システムコンサルタント会社として主にシステムの仕様策定から稼働後の運用支援を請け負う。システム開発は、加盟するSIerの業界団体「日本情報サービスイノベーションパートナー協会(JASIPA)」のメンバーに依頼することが少なくない。梅谷康子代表はJASIPA理事
URL:https://www.femtolab.biz/
「業務分析」をより重視
梅谷康子代表
フェムトラボの梅谷康子代表が、システムコンサルティングの世界に足を踏み入れたのは、製造業ユーザーに生産管理システムが急速に普及しだした1980年代。当時、京都大学で遺伝子組み換えや細胞融合などの研究に従事していた。製造業や工場現場と接する機会が多かったことがきっかけとなり、生産管理システムの仕様書づくりを始めた。「財務会計や給与計算などに比べて生産現場のシステム化は緒に就いたばかり」(梅谷代表)。どのような業務を行っているのかの聞き込みから始めた。
最初は、例えば「一枚の鉄板から、異なる形の部品を何個とれるか」といった計算をさせる小さなシステムから手がけたが、次第にシステム規模が大きくなっていく。1984年に梅谷代表が創業したコンサルティング会社のフェムトは、最盛期で10人ほどの技術者を雇っていたが、すぐに人手が足りなくなった。そこで、2010年、大阪に本社を置く200人規模の開発力がある中堅SIerに事業移管。その後、システムコンサルティングを専業とするフェムトラボを17年に改めて立ち上げた経緯がある。
初代フェムトの創業から30年余りの経験を踏まえ、梅谷代表がこだわっているのは、「システム分析よりも業務分析のほうが遥かに重要」ということだ。“経営者が何をやりたいのか“や“現場の課題はどこにあるのか”を聞き出して、最終的にこの会社は“どうしたいのか”を導き出す。「どうやって(システムを)つくるかについては、今の時代、どうにでもなる」というのが梅谷代表の持論だ。
聞き取った内容を書き記すため“2冊束ねのB6ノート”を肌身離さず持ち歩いている
聞き込みは機械で代替できない
ソフト開発ツールや超高速開発ツールなどを使った効率化、自動化の技術進歩は目覚ましいものがあり、高品質なソフトが早く、安くつくれるようになった。しかし、いくら生産革新が進んでも、極端な話、将来的にAIによってソフト開発が完全自動化されたとしても、「ユーザーへの聞き込みの部分は、決して機械で代替されるものではない」と捉えている。
だからこそ、新生フェムトラボでは、ユーザーへの聞き込みと、システム稼働後の3~6か月に「調整期間」を設定して、問題なく使えるようにするまでの運用支援に特化することにした。
梅谷代表の聞き取りのスタイルは、まず経営者にインタビューする。経営者が何をしたいのかが分からなければ仕様書のまとめようがないし、決定権のある人に方針を決めてもらわないとシステムのコンセプトが定まらないとの考えからだ。
その次に事業所に足を運び、現場の生産管理の責任者と、実際に作業する担当者の両方に話を聞く。日本の工場の場合、現場担当者の裁量が大きく、生産管理の責任者が十分に把握していないことが珍しくない。このため「現場で徹底的に聞き込む」スタイルを重視する。現場を歩きながらでもメモをとれるよう、B6サイズのノートを2冊束ねて常に持ち歩いている(写真参照)。1冊では、すぐに書ききれなくなるからだ。
その後、データを入力する事務作業者の話を聞き、どんなインターフェースが使いやすいのか、今使っているシステムで使いにくいのはどこなのかをていねいに聞き込む。
そして、最後に足を運ぶのが、情報システム部だ。「まず情報システム部から回る人もいるが、私は経営層から現場、最後に情報システム部に足を運ぶ。経営者がやりたいことと情報システム部がやりたいことは、必ずしも一致しない。そのため、まずは経営層からのほうがよいシステムができる」との方針で、システムづくりに情熱を注いでいる。