先日、SIDEILINEという社団法人が立ちあがった。複数の仕事を同時並行で行う新しい働き方、そして生き方を推進する法人だ。そのミーティングに私も登壇させて頂いたが、参加された方たちの真剣な姿勢に圧倒させられた。日本橋ということもあり、ほとんどの方が大企業の従業員で、これから複業にトライしてゆきたいと考えている方たちだ。『複業解禁で、キャリアと組織は変わっていくのか?』私たちを取り巻く働き方が、急速に多様化している。1つの会社、1つの仕事という「閉じられたコミュニティ」で職業人生を終えることは考えにくい時代。だからこそ、複数のコミュニティとつながり、自分らしい仕事とパラレルに向き合う「パラレルワーク(複業)」に対する関心が高まり、その動きは加速してゆくものと思われる。
複業を早々に解禁した上場企業の責任者は、昨年まではなぜ複業を解禁したのかと多くのメディアに取り上げられたが、今年は複業を認めない企業に「なぜ複業を認めないのか?」という質問が殺到するのではと語った。
外資系企業から転職をした方は、月曜日を複業の日とし、好きな農業と講師業を復業とした。その結果、8割以上の収入を確保したまま好きな仕事と時間を手に入れたという。
私はこの歳でベンチャー企業に参加しているが、家族のことも考えながら自分の夢にチャレンジ出来ている。日本においてはスタートアップを支援する仕組みがまだまだ不十分で、「失敗=終わり」のような印象が強いが、複業がそれを変えてくれる一つの手法になる。もちろん起業はそんなに甘いものではないし、甘いというご意見もあるだろう。しかし、複業という手段がなければチャレンジすることさえもなかったかもしれない。
そして、人生100年時代に60歳で定年し悠々自適な生活なんてことはもうない。しかし、企業は終身雇用で70歳まで面倒見てくれるなんてことも幻想だ。そうなると自分で稼ぐということに慣れていかなくてはならない。だから複業を常識にしなくてはならない。複業にはいろいろな目的や形がある。お金だけではなくネットワークやコミュニティへの参加など多くのメリットがある複業。まずは自分が役に立てるところがどこにあるのか、探してみるといい。
事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴

渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。