日本情報技術取引所(JIET)は、各支部で定期的に開催している商談会により、会員にシステム開発案件などを紹介しあうことが、重要なミッションの一つとなっている。ところが、近年はシステム開発案件が多く、エンジニア不足の状況にあるため、案件紹介の場としての商談会では、会員の満足度を上げることができない。そこで神奈川支部では、会社の規模が小さくても、高い技術力をもつ会員企業が多いことに着目し、将来の事業展開のきっかけとなるような活動に注力している。(取材・文/畔上文昭)
商談会でハンズオンを実施
南出健治
神奈川支部長
横浜市や川崎市を中心に70社弱の企業が会員となっているJIET神奈川支部。各支部同様、神奈川支部も商談会を中心とした活動を軸としてきたが、近年は新たな取り組みに注力している。その理由を南出健治・神奈川支部長は次のように語る。
「JIETは仕事をいただく、または出すというところから始まっているが、近年は案件過多の状態で、システム開発案件の紹介を必要としている会員は減っている。情報交換の場としての役割もあるが、インターネット上で多くの情報を得られるため、リアルな場に出る必要性が低くなってきている。目的もなく集まって宴会をするというのもいいが、会員企業が満足できるような活動をしていかなければいけない」
JIETは各支部で定期的に商談会を開催しており、そこでは冒頭に講演会を行うのが一般的になっている。神奈川支部も同様に商談会を実施しているが、講演会部分をハンズオン形式の勉強会に切り替えるといった取り組みも始めている。「比較的新しい開発環境を使えるノウハウが身につくようなハンズオンを実施してみた。ロールプレーイング的な手法を取り入れるなど、楽しみながら学習できると評価は高い。さまざまなノウハウを得る場とすることで、商談会を『仕事があります』ではなく、受け身になりがちな会員が『こういうことをしたい』『こんな提案ができる』に変えていただけるような内容にしたい」(南出支部長)と、今後も積極的に新たな取り組みを取り入れて、会員が参加するメリットを感じる商談会にしていく考えだ。
また、JIETで各支部へと活動を展開している青年委員会は、神奈川支部が発祥。この取り組みは神奈川支部の幹事会に提案があった翌月には、活動をスタートさせたという。今後も神奈川支部は、柔軟かつスピーディな姿勢で取り組んでいく。
コワーキングスペースを使い、開放的な雰囲気で開催した商談会
組み込みの技術力を生かす
神奈川支部の会員には、SES(System Engineering Service)や受託開発を軸とする企業が多いが、県内でデバイス系の産業が盛んなことから、組み込み系に強い企業も多い。なかでも、IoT機器に対する市場の盛り上がりから、機械を動かすといった伝統的な組み込み系システムのニーズが増えている。神奈川支部では、こうした会員の特性を生かすべく、新たな展開を模索している。
「データベースと機械の両方ができるIT企業は少ない。IoT関連のメーカーも、どこに頼んだらいいかがわからず、困っている。神奈川支部には、どちらかを得意とする会員がいるため、協力しあってビジネスにしていくような取り組みを始めている。神奈川支部の会員は規模が小さくても、高い技術力をもっている。ただ、その技術力を生かすには、きっかけが必要。その意味で、IoTは最適なケースとなる。すでに引き合いは多い」と、南出支部長は語る。
神奈川支部は、こうした取り組みを海外へと展開していくことを考えている。JIETは近年、海外支部を積極的に設立するなど、海外進出に注力している。神奈川支部は、この流れを生かし、会員の海外展開を支援する。
「海外には日本の製造業が多く進出しており、国内と同様にIoT関連の組み込み開発を必要としているはず。もちろん、IoTに限らず、神奈川支部会員の技術力を生かすようなビジネスを模索していきたい。神奈川支部の会員は70社弱。どの会社が何を得意としているかを把握しているので、最適なビジネスマッチングが実現できる」と、南出支部長。将来的には、日本企業に限らず、欧米企業の案件を獲得することも視野に入れている。