令和の仕事始めだった5月7日、日本行政書士会連合会と山口大学とコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の三者は、著作権の普及啓発に関する包括連携協力で協定を結んだ。
山口大学の知的財産センターは、平成27年から文部科学省の「教職員の組織的な研修等の共同利用拠点(知的財産教育)」に認定され、全国の大学などを対象に、山口大学が開発してきた教材を使い研修を行っている。ACCSは同大学の著作権講座の外部講師アレンジなどに協力しており、私自身も特命教授として教材開発から参画し、学生への授業も担当してきた。
一方、全国で4万8000人の行政書士の皆さんは、それぞれの地域で著作権に関する相談や著作物を利用する際の利用許諾、権利処理の窓口になるなどの役割を果たし始めている。ACCSはこれまで佐賀県など九州の行政書士会と共同イベントを開催したこともある。
ACCSは設立以来30年以上にわたり、ソフトウェアのほかデジタルで提供される著作物の権利保護に尽力してきた。言うまでもなくソフトウェアはデジタル形式の著作物。そのため、コピーが容易で、海賊版の被害も甚大だった。現在ではインターネットとIT機器の普及により、ソフトウェアだけでなく文章、写真、音楽、映像などあらゆる著作物がデジタル化され、利用されやすくなった半面、違法コピーの被害も広がっている。
私たちは活動を通じて、そうした著作権の侵害対策と教育に関するノウハウを培ってきた。このノウハウは山口大学での教材作りにも生かしたが、これをより広く全国に提供しようと考えたとき、行政書士会の皆さんはベストな連携の相手なのだ。
意図せず著作権を侵害してしまうリスクを避け、著作物を適切に利用し、新たな著作物を創造していくためには、著作権教育、情報モラル教育を行うことが極めて重要だ。
その意味で、町の法律家として地域に根ざした行政書士の皆さんに私たちのノウハウを提供できれば、著作物を正しく利用するための法教育にもつながり、情報モラル育成にもなるだろう。三者の協業が進めば、日本の情報社会の秩序の醸成や、創作と利用のため著作権を生かすための教育に貢献できるものと期待している。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。