視点

週刊BCN 編集長 本多 和幸

2020/04/17 09:00

週刊BCN 2020年04月13日vol.1821掲載

 「緊急事態宣言」を発令した安倍晋三首相の記者会見を見ながら書いている。どこか原稿を読み上げているような熱のなさや、素の部分で危機感を国民と共有しようとしているのか疑問を感じてしまう語り口はこれまでと変わらない。今さらがっかりしたということもないのだが、多くの国民の行動変容を促す効果がどれほどあったか。宣言自体の強制力は弱いだけに残念だった。

 感染拡大の不安と、感染防止のための半ば強制的な抑制生活が世界中に広がった緊急時である。リーダーが発するメッセージが、社会全体のムード、ひいては収束への道筋を左右するのも確かだろう。ドイツのメルケル首相やニューヨーク州のクオモ知事などに対しては、その演説内容やコミュニケーションのあり方を評価する声が大きい。一方で米国やドイツと比べて日本の状況が悪いかと言えば、少なくとも現時点ではそうではない。人類未知の危機である。何が正しく有効な対処法だったのか、評価には時間がかかる。都度それぞれの立場で最善を目指して努力するしかない。

 感染拡大の条件や抑止策、私たち一人一人ができることはかなり明確になってきている。感染のリスクを避けながらも、ストレスを溜めない、何とか日々生きていくための糧を得る、自分の身の回りの課題を解決するための知恵と工夫は、新型コロナ禍収束後の社会の進化につながるはずだ。

 経済活動においても同様だ。この状況下でも自分たちのビジネスを維持・もしくは成長させるために知恵を絞って行動することが、新型コロナ禍を乗り越えるために不可欠だ。食品製造や物流、薬局やスーパーなど生活必需品を扱う小売りなどは、“巣ごもり需要”に伴いビジネスが拡大している。いかにドラスティックな環境変化に対応し、市場のニーズに十分に応えていくのかはデジタルトランスフォーメーション(DX)の範ちゅうだが、緊急時だからこそ需要が急拡大し、早急なDXの取り組み、もしくはDXの基盤整備が必要な業界もある。ITベンダーの中には、そうした業界向けに社内のリソースを手厚く振り分けて、直近のビジネスリスクを回避しようという動きも見られる。「火事場泥棒」と誹るべからず。結果的にこうした取り組みこそが、緊急時における必要最低限な社会的機能を維持する助けになり得るのだ。
 
週刊BCN 編集長 本多 和幸
本多 和幸(ほんだ かずゆき)
 1979年6月生まれ。山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部文学科中国文学専修卒業。同年、水インフラの専門紙である水道産業新聞社に入社。中央官庁担当記者、産業界担当キャップなどを経て、2013年、BCNに。業務アプリケーション領域を中心に担当。2018年1月より現職。
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