日本政府公式の「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」の提供が2021年12月20日に始まった。初日に登録を試みたが、早速、大きな壁にぶつかった。マイナンバーカードに旧姓を併記していたため、そもそもアプリで接種証明書を発行できる対象に含まれていなかったのだ。

 コロナ禍を機に、国内でデジタル化に向けた機運が高まっている。政府は同年、「デジタル社会形成の司令塔」となるデジタル庁を新設し、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」をミッションとして掲げた。

 牧島かれんデジタル大臣は、アプリの提供を開始した翌日の21日、旧姓併記の問題について「課題があることは認知している」としつつ、「確実な(接種証明書の)発行を担保するための検証時間を十分に確保する必要があるため、ファーストリリースには(旧姓併記に対応する機能を)実装していない」と話した。1月中の実装を目指しているそうだが、取り残された側としては寂しい気持ちしかない。

 この約2年間で、IT業界を取り巻く環境は大きく変わった。テレワーク向けの製品やサービスの導入拡大や、それに関連する新しいサービスの登場、既存ビジネスの見直しなど、ITベンダーにとっての変化は枚挙にいとまがない。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)が言葉として社会に浸透し、ITベンダーの経営者からは、以前と比べて顧客やパートナーの意識は変わりつつあるとの声が多く上がっている。IT業界内では、単なる製品やサービスの提供だけでなく、顧客のビジネスに直結する「本当の意味でのDXの実現」や「価値の提供」を目指す動きが徐々に広がっている。

 政府は同年12月の月例経済報告で、全体の景気判断を1年5カ月ぶりに引き上げ「持ち直しの動きがみられる」とした。ITベンダーの顧客の間でも、業績が好調で、IT投資に積極的な企業は少なくないだろう。一方、依然としてダメージが色濃く残る業種があることも忘れてはならない。国内のデジタル化を推進するためには、暗闇の中でもがく企業を取り残さず、ITの力で光を当てることが重要だ。ITベンダーに対する期待は引き続き大きいと感じている。

 22年1月1日付で週刊BCNの編集長に就任することになりました。IT業界でビジネスを展開する読者の皆さまにとって、価値のある情報の発信に努めてまいります。引き続きご愛読ください。

 
週刊BCN 編集長 齋藤 秀平
齋藤 秀平(さいとう しゅうへい)
 1984年4月生まれ。山梨県甲州市出身。2007年3月に三重大学生物資源学部共生環境学科を卒業。同年4月に伊勢新聞社(津市)に入社し、行政や警察、司法などの取材を担当。16年4月にBCNに入社。リテール業界向け媒体の記者を経て、17年1月から週刊BCN編集部に。上海支局長を務め、22年1月から現職。旧姓は廣瀬。