視点

生成AIはどこへ向かうのか

2023/08/23 09:00

週刊BCN 2023年08月21日vol.1981掲載

 6月12日、ChatGPTの開発元である米OpenAI(オープンAI)のサム・アルトマンCEOが日本を訪れていた。その際、慶応義塾の三田キャンパスで塾生たちと交わされた対話をヒントに、私はこの後の生成AIの二つの発展段階を考えた。

 アルトマンCEOは対話の中で、「大規模言語モデルはこれからさらに進歩していく。オーディオや動画、そしてテキストなどのモダリティを取り込んで統合し、さらに進化していくだろう。そのことによってより賢くなっていくはずだ。今は、人間がやっていることを真似する方向に進んでいるが、それだけでなく、新しいアイデアを生み出すことができるようになるだろう」と語った。

 確かに現在のChatGPTは、人間がやっているように間違った答えを返すこともあるし、そのままうのみにしないよう注意を促すなどの気遣いもみせる。そこに人間らしさを感じ、私たちは相談相手としてプロンプトを入力している。

 現在は、私たちが入力するプロンプトを正しい問いとして答えを返してくる。おそらく次の段階では、私たちが「本当に聞きたい問い」はこれではないか、と問いの本質をいくつか提案してくるであろう。「よい答えはよい質問から」。この言葉にあるように、よい問いがなくてはよい答えを大規模言語モデルから引き出せない。そうであれば、AI側からよい問いを導く提案をするようになるのではないだろうか。

 さらに次の段階としては、今はこちら側からアプリを立ち上げてプロンプトを入力しているが、「今のスケジュールからすると、そろそろこれをやったほうがいいのではないか」という提案をAI側からプッシュしてくるであろう。

 ここまでは、人間がやっていることを真似するという進化の延長線上にある発展で、想像に難くない。私が気になるのはその先だ。その先にはどんな発展段階があるのだろうか。楽しみでもあり、恐ろしくもある。

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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