視点

「濃淡」をなくすために

2023/11/22 09:00

週刊BCN 2023年11月20日vol.1993掲載

 国内企業のIT投資は引き続き堅調に推移している。特にヒト、モノ、カネが潤沢にある大企業は、DXの成功事例をさらに進めたり、広げたりしている印象だ。ITベンダーの説明会や発表会などに登場するユーザーも大企業が中心で、華々しい成果が示されるケースが目立っている。

 調査会社のデータを見ると、2022年度は、各企業が積極的にIT投資をしていた。古いシステムの刷新や新しいツールの導入など、投資先はさまざまで、DXに向けた動きは着実に広がったといえる。23年度は、引き続き同じような状況が続くと予想され、その通りになっているとみていいだろう。

 このような状況を背景に、ITベンダーのビジネスはおおむね好調に推移している。例えば、SIer大手3社の23年上期(1~6月)業績は、国内の旺盛なIT投資に支えられて増収増益の決算となったと、11月13日号で弊紙は伝えている。世界的に遅れが指摘されていたIT活用を前進させるべく、多くの企業が積極的な姿勢を示しているといえる。

 一方、中小企業に限って見ると、ITベンダーからは「まだまだこれから」との声をよく聞く。特に地方では、その傾向が強いと感じている。以前からITの導入や活用では都市部の大企業が先行するきらいがあるが、DXに関する取り組みでも、企業の規模や所在地で濃淡があるようだ。

 日本コンピュータシステム販売店協会が10月に発表した「セキュリティーとデジタルトランスフォーメーションへの取り組み状況に関する調査研究中間報告(中小規模企業対象)」によると、従業員数21~350人の中規模一般企業では、「DXは必要」と考えている割合は80%となった。22年度の78%より多くなったものの、21年度の84%を下回っている。従業員数2~20人の小規模一般企業では、初めて半数を超える57%が「DXは必要」との見解を示したが、残る43%は「必要と考えていない」との状況だ。

 国内では、多くの企業がDXを目指している。こうした動きは今後、さらに加速することが予想されるが、大企業だけの話で終わってしまっては、国としてのレベルアップにはつながらないし、政府が目標に掲げるデジタル社会を実現するのは難しい。中小企業の変革をさらに進めるためには、企業自身の取り組みだけでなく、外部からの支援も不可欠で、ITベンダーが果たす役割は大きくなるだろう。

 
週刊BCN 編集長 齋藤 秀平
齋藤 秀平(さいとう しゅうへい)
 1984年4月生まれ。山梨県甲州市出身。2007年3月に三重大学生物資源学部共生環境学科を卒業。同年4月に伊勢新聞社(津市)に入社し、行政や警察、司法などの取材を担当。16年4月にBCNに入社。リテール業界向け媒体の記者を経て、17年1月から週刊BCN編集部に。上海支局長を務め、22年1月から現職。旧姓は廣瀬。
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