〈企業概要〉
独Schneider-Neureither&PartnerSE(シュナイダー・ノイライター・アンド・パートナーSE、SNP)は1994年設立。独SAP(エスエーピー)システムのデータ移行・統合支援が事業の中核。世界20カ国に35の拠点を持つ。日本法人のSNP Japanは2020年設立。
日本企業の多くが基幹システムに採用している独SAP(エスエーピー)のERP。SAP製品のデータ移行や保管、有効活用に強みを持つ独Schneider-Neureither&PartnerSE(シュナイダー・ノイライター・アンド・パートナーSE、SNP)の日本法人SNP Japanは、データ移行を自動化するソリューションにより、システム移行のダウンタイムを最小限に抑えられる点を訴求。「週末移行」も可能になるとして、SIerなどのパートナーとの連携を強化。レガシーシステムの刷新で存在感を高めている。
(取材・文/堀 茜)
データ移行を自動化
SNPは、保守期限が2027年末に迫る「SAP ECC 6.0」を「SAP S/4HANA」にマイグレーションする際のデータ移行に強みを持つ。最大の特長が、データ移行を自動化できる点だ。システム刷新にあたり、多くの企業はカスタマイズを最小限に抑え、運用をスムーズにしたという狙いがある。
細谷修平 社長
ただ、カスタムコードを止めるとなるとデータの持ち方が変わり、古いデータの移行には膨大な手間が必要となる。そこで威力を発揮するのが、SNPが提供する「Kyanoプラットフォーム」だ。通常はエンジニアが一つ一つのデータをチェックし、多大な工数がかかる作業を自動化エンジンで実施。米国企業で、データが160テラバイトある巨大なSAPシステムのデータ移行が20時間で完了した例もある。データ移行にかかるダウンタイムは、通常4~5日のところを2日程度に短縮できるという。
SNP Japanの細谷修平社長は、「データ移行の効率を上げられるのが当社ソリューションの最大の強みだ」と説明する。SAPの移行プロジェクトは、14~15カ月かかるのが一般的だが、SNPのソリューションを活用することで、7カ月程度で完了できるケースもあるという。SNPが提唱する「週末移行」は土日だけシステムを止めデータ移行を完了することで、業務への影響を最小限に抑えることができるとし「S/4HANAへのマイグレーションを民主化し、市場の構造を変えていくために必要なのが週末移行だ」と強調する。
パートナーの人手不足も支援
国内での事業の現状について細谷社長は、23年から24年の一年間は前年比1.5倍と大きく成長したと言及。一方で、「日本はグローバルと比較し、システムのマイグレーションは遅れている」との実感を持つ。同社はある市場調査の結果として、国内ではECC 6.0のシステムがまだ全体の半数程度残っており、保守期限までに移行を完了させる必要があると指摘。日本企業は、システムのカスタマイズが多い傾向にあるため、データの自動移行による効率化の割合はより高まるとみる。
そのために最重視するのが、パートナーとの連携だ。同社はこれまで、グローバルで富士通、アクセンチュア、米IBMなど、SAPのマイグレーションを手掛けるプレイヤーと協業を進めている。日本市場でも多くの稼働実績があり、クラウドシフトの「RISE」の事例が多い。SNP Japanは、今後日本でSAPビジネスを手掛ける主要ベンダーを全てパートナーとして開拓していきたいと意気込み、国内で複数のSIerなどとパートナーシップの締結について具体的に協議を進めている。細谷社長は「より多くのパートナーに当社のエコシステムに加わってもらうことで、日本のシステムのマイグレーションに大きく貢献し、ビジネスの成長にもつながる」と力を込める。
SIer側からSNPソリューションへの需要が高まる背景として、SAPシステムのテクニカルな専門家であり、企業のSAP環境の効率的かつ安定した運用をサポートする役割を担うSAP BASISコンサルタントが不足している現状を挙げた。パートナーの中には、十分なコンサルタントをアサインできない案件では、SNPの自動化ツールを活用してプロジェクトを実施している例もあるという。
同社では、データ移行を短期間で実施することで移行プロジェクト全体を短縮し、コスト削減に貢献できるという自社ソリューションの強みをメッセージとして市場に発信。「2027年問題を解決するかぎとして提示したい」とする一方、「実際に顧客にデリバリーするのはパートナー企業になる」として、パートナーとの連携をより深めていきたいとする。
協業の方向性として、SNPのソリューションを組み込んでSAPのマイグレーションのパッケージ提供に向けて検討を進めているパートナーがあることも明かした。細谷社長は「SAPのマイグレーションをより民主化する手段になっていくのではないか」と期待を寄せる。