〈企業概要〉
米KnowBe4(ノウビフォー)は2010年8月に設立。セキュリティー意識向上およびコンプライアンストレーニング、クラウドメールセキュリティー、リアルタイムコーチングなどをプラットフォームで提供する。導入企業はグローバルで7万社以上。
米KnowBe4(ノウビフォー)は、セキュリティーを重視する風土や気風である「セキュリティー文化」を形成する必要性を訴求しており、それを実現させる手段として、「Human Risk Management Platform」上で、セキュリティー意識向上トレーニングコンテンツなどを提供。グローバルで7万社以上に導入されるなど、年々、存在感を高めている。日本市場においては、パートナーとの協業を推進することで、幅広い企業への導入を目指す。
(取材・文/岩田晃久)
高度なパーソナライズが可能
ノウビフォーは2010年8月に設立。eラーニングや訓練メール、分析機能といった機能を搭載する「KSAT」を中核に、フィッシング対策製品「PhishER Plus」、リアルタイムセキュリティーコーチング製品「SecurityCoach」などをプラットフォームで提供する。KnowBe4 Japanの広瀬努・セキュリティエバンジェリストは「利用するお客様のデータを収集・分析して、客観的に状況を把握しながらマネジメントできる製品だ」と話す。
広瀬 努
セキュリティエバンジェリスト
KSATで提供する豊富なトレーニングコンテンツが特徴の一つとなる。実践的なモノから、ゲーム形式、ショートドラマ仕立てなどさまざまなコンテンツを用意する。広瀬セキュリティエバンジェリストは「セキュリティーの場合、『つまらない』『自分には関係ない』などと思う人が多いため、興味を持ってもらうコンテンツが必要になる。コンテンツづくりには積極的な投資を行い充実させている」と述べる。コンテンツは34カ国の言語に対応しており、ほとんどが吹き替えされている。
高度にパーソナライズ設定できるのも強みとする。自動グループ機能では、部門や役職、入社年月などを設定することで、該当する従業員に対して必要なコンテンツを自動で配信できる。また、AIを活用して個人に合った訓練設定が可能。トレーニングの進ちょく状況や結果は、一人一人可視化されるため確認も容易だ。ユーザー課金を採用しており、利用回数に制限を設けていない。加えて、企業ごとにカスタマーサクセスマネージャーが付き、トレーニングの頻度や、配信するコンテンツの選定などをアドバイスする。
リスクを恐れず生成AIを利用
ヒューマンエラーの場合、個人の問題とされることが大半だが、「個人を叱って、処罰すればいいという訳ではなく、組織全体の問題として捉えられるのが重要だ」(広瀬セキュリティエバンジェリスト)とする。そのために必要となるのが、セキュリティー文化の形成だという。セキュリティー文化を形成するには、個人のセキュリティー意識を向上させるのと同時に、組織が現状を認識し、報告・連絡ができる体制の構築や、コンプライアンスの強化などに取り組む必要があるとする。
同社製品にはアンケート機能を搭載しており、従業員から組織のセキュリティーへの意識や取り組みを評価できる仕組みとなっている。広瀬セキュリティエバンジェリストは「企業がどこに注力しなければならないのかを明確にし、それに必要な対策を提供できる」と強調する。
現在はさまざま生成AIサービスが登場しているが、情報漏えいをはじめとしたヒューマンリスクを問題視する企業は多い。広瀬セキュリティエバンジェリストは「生成AIを導入してもマニュアルやルールでがんじがらめにしてしまうと利点が阻害される。ヒューマンリスクを恐れずに生成AIを利用していくためにも、企業はセキュリティー文化をつくる必要がある」と訴える。
国内では500社以上が導入
20年2月にKnowBe4 Japanを設立し、日本でのビジネスを本格化、年々顧客は拡大しており、大手企業を中心に500社以上で製品が利用されている。
国内では100%間接販売のため、パートナー戦略の強化を図っている。現在は、ネットワールド、SCSKといったディストリビューションを担うパートナーとNEC、電通総研、三井物産セキュアディレクションなどのリセールパートナーに分かれ、拡販を進めている。広瀬セキュリティエバンジェリストは「グローバルで事業展開しており、当社製品への関心が高い企業に対してはリセールパートナーと、中堅・中小企業に対してはディストリビューターを通じて販売を強化していく」と展望する。
販売施策としては、パートナーが生成AI製品や、医療など特定の業界向けのシステム、SaaSなどを販売する際に、セキュリティー強化の観点からセットで提案してもらうことを想定しており、販売ノウハウの提供など支援を充実させる。また、プラットフォームは外部のコンテンツを取り込める仕様となっているため、独自で教育コンテンツを制作しているベンダーやパートナーとの協業も推進するという。