視点

AIが変えるソフトウェア開発とSIビジネスの未来

2025/08/27 09:00

週刊BCN 2025年08月25日vol.2072掲載

 強力なAIコード生成ツールや自律型AIエージェントの登場は、ソフトウェア開発の常識を覆し、IT人材不足を解消する一方、既存のビジネスモデルを根底から揺るがしている。特に、投入した工数(人月)を積み上げて収益を得ることを前提としたSIビジネスは、AIがその工数そのものを代替するため、ビジネスモデルの根幹が揺らぐ。

 SIerが進むべきは、ウォーターフォール開発前提の既存プロセスをAIで部分的に「改善」して廉価で仕事を請け負う道ではなく、アジャイル開発やDevOpsなどを前提に、開発プロセス自体をAIと共に抜本的に「変革」する道だ。

 これは単にツールを導入するだけでなく、設計、実装、テスト、デプロイに至る開発ライフサイクル全体をAIと協調して動くかたちに再構築することを意味する。これにより、開発の速度と質は従来とは比較にならないレベルまで飛躍的に向上する。

 いずれユーザー企業はAIを活用して内製化を拡大するだろう。そうなれば、SIerは「人はいるが仕事がない」という深刻な危機に直面する可能性は高い。

 この危機を乗り越えるには、人月ビジネスから完全に脱却し、「技術力」や「専門性」といったAIには代替できない高度な付加価値を提供するビジネスへの転換が不可欠だ。

 それは、顧客が事業を展開する業界特有の課題を深く理解し、最適な技術を組み合わせて、業務の改革やビジネスモデルの変革を支援できる「お客様の教師」としての役割に転換しなければならない。具体的には、AI活用コンサルティング、顧客の内製化支援などのビジネスが考えられる。

 システムを構築・納品するだけでは仕事は減っていく。企業の事業戦略そのものに踏み込むコンサルティングや、長年培った業界ノウハウを結集させた自社独自のサービス提供が求められる。

 旧来の常識に固執せず、SIer自らが変革を実践し、迅速に行動することが今まさに求められている。変化の潮流に乗り遅れることは単なる機会損失ではなく、企業の存続そのものを脅かすリスクとなること覚悟せよ。

 
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義
斎藤 昌義(さいとう まさのり)
 1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。
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